なぜなぜ分析で「5回のなぜ」を繰り返し、真因を導くためのポイントを解説
目次
なぜなぜ分析は、日々の業務、改善活動では欠かせない問題解決の技術です。
本ページでは、なぜなぜ分析の考え方、進め方について解説をしています。なぜなぜ思考で考える力を付け、日々の業務における問題解決力を上げていきましょう。
なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析とは、「問題をただ処置するだけではなく、「なぜ」を繰り返し、問題を深堀して、根本原因を対策することで再発を防ぐ考え方」のことを言います。英語で言うと「Root Cause Analysis,RCA」です。
なぜなぜ分析は、もともとトヨタ自動車の問題解決の考え方から生まれたもので、今では世界的に活用されている分析手法です。「5なぜ分析」、漢字で表記した「何故何故分析」、「5なぜの法則」と呼ぶこともありますが、同じ考え方として使われます。
なぜを追求することの重要性
なぜを追求することは、なぜ重要?
ではまずは、なぜを追求することの重要性について確認してみましょう。
なぜを追求することは、なぜ重要でしょうか?自信を持って答えられますか?
一度起きた問題では二度と利益を失わない!
作業の抜けが発生したり、同じ不良が発生したり、同じ箇所の故障が発生したり、保全部品の欠品が発生したり、というように、日々の業務の中では、数々の問題が発生します。
問題が発生した時、その問題を処置のみで対処することを繰り返していてはどうなるでしょうか。
結果的にトラブルは再発し、同じことでロスを生んでしまうのです。
処置のみで済ませていると、いつか必ず問題は再発し、利益を失います。
人、モノ、金の貴重な経営資源を、過去に起きた同じ問題で失ってしまうのは、非常に勿体無いことです。
一度起きた問題では二度と利益を失わない。そういう姿勢で日々の問題解決を行なっていかなければいけません。
なぜなぜ分析を正しく実施出来ていない職場では・・・
なぜなぜ分析は、問題解決に非常に有効な手段となりますが、正しく実施出来ていない職場も多いのが実情です。
例えば、問題となる現象・事象に対して、なぜを経験・勘だけで決め付け、結論ありき、途中省きを繰り返しているケースも多々あります。
他にも、結論が出てから「なぜなぜ分析」を行なっている意味の無いケースや、「なぜ」が全く繋がっていないケース、そもそも現象が大き過ぎてはっきりしておらず、何を分析したいのかよく分からないケースも散見されます。
こういった職場では、「対策をしたが不良が減らない!」「故障が減らない!」といった状況になってしまうのも無理はありません。
なぜなぜ分析を正しく実施できていなければ、当然効果も出ません。
言葉のお遊びになっているような分析を止めて、効果・成果を出すための「なぜなぜ分析」を進めて行く必要があるのです。
真因が出るまで続けよう!
では、なぜなぜ分析の基本となる考え方を確認しましょう。
真因を特定し、再発防止策を打つために、次のように「なぜ」を5回繰り返します。
問題となる事象に対して、
1回目の「なぜ」
2回目の「なぜ」
3回目の「なぜ」
4回目の「なぜ」
5回目の「なぜ」
というように繰り返していきます。
「なぜ」を繰り返していく過程で、挙がってきた各要因を現地現物で確認・判定し、問題ないことが確認された場合には、そこで「なぜ」をやめます。
最終的に、残った要因が「真因」と呼ばれ、この真因に対して、再発防止策を打っていきます。真因は1つとは限りません。
このような考え方が「なぜなぜ分析」の基本です。
なぜ1、なぜ2のレベルで深堀りを終わらせずに、再発防止策に繋がる真因が出るまで「なぜ」を続けることを意識していくようにしましょう。
「なぜ」は必ず5回繰り返さなければいけない?
ここで、よくある質問である、「なぜは必ず5回繰り返さなければいけないのか」について考えてみます。
基本的には、「なぜ」は何が何でも必ず5回である必要はありません。
無理に5回繰り返そうとして、繋がりのないものになったり、意味の無い分析をするのは避けなければいけません。
ただし、再発防止策に繋がる真因を導くためには、一般的に5回が目安と言われています。
なぜなぜ分析発祥のトヨタ自動車では、新人の頃は「必ず5回繰り返せ!」と言われて育つそうです。
なぜなぜ分析の力がまだ不十分だと感じているのであれば、まずは5回繰り返すことにこだわってみることで、分析力の向上を図っていくことをオススメします。
対策は真因の裏返し!
基本的に、対策は真因の裏返しです。真因がしっかりと特定できれば問題の9割は解決したと考えても構いません。
例えば、「工場内で転倒した」という事例に対して、「足を滑らせた」「不注意だった」という分析で終わってしまっていては、「注意する」「注意喚起する」程度の対策しか出てきません。
このような分析では、いずれまた発生してしまうことは、火を見るよりも明らかです。
そうではなく、「足を滑らせた」→「床が濡れていた」→「A設備から水漏れが発生していた」→「ジョイント部分が劣化したままになっていた」→「定期点検から漏れていた」というように真因を特定していくと、「A設備のジョイントを月に1回定期点検を行なう。」といった対策が出てくるのです。
この場合、5回目のなぜの時点でほぼ問題は解決していますよね!
分析手法の比較
ここで参考として、不具合分析における、各種手法の特徴を確認していきます。
PM分析は、慢性不具合を対象にした分析手法です。不具合の発生メカニズム・原理の分析技術が求められます。
FMEAは、潜在不具合を対象にした分析手法です。製品・製造工程の設計原理の分析技術が求められます。
FTAは、発生確率予測を行なう分析手法です。現象の理論的展開力が求められます。
FMEAはボトムアップ、FTAはトップダウンの分析手法です。
そして、なぜなぜ分析は、発生不具合に対する分析手法です。あるべき姿との比較検討力が求められます。
なぜなぜ分析の特徴としては、
・深い理論を必要とせず気軽に着手できること
・全員参加の議論でメンバーのレベルアップが期待できること
・完成した資料は会社の技術資産になること
等が挙げられます。
なぜなぜ分析の狙い
勘、度胸、思いつきでは問題はいつか再発する!
それでは次に、「なぜなぜ分析の狙い」について確認しましょう。
繰り返しになりますが、問題解決においては、誰かの勘、度胸、思いつきで進めても、いつか必ず再発します。
そういった再発を防ぐ為に、「なぜなぜ分析」は非常に有効な手段となります。
なぜなぜ分析の狙いをまとめると、次の3点です。
1つ目は、問題の根本原因を対策し、再発を防止することです。
再発を防止することで、会社収益が向上します。同じロスは2度と繰り返されないので、同じことで利益を失わないからです。
更に、再発防止は、職場における安全性の向上にも寄与します。同じ事故は2度と繰り返されないので、安心して仕事が出来る環境の構築に繋がるからです。
2つ目は、物事の理屈を学び、新たな気付きを得ることです。
なぜなぜ分析では、5ゲン主義(現場・現物・現実・原理・原則)で的確にモノゴトを捉える力が付きます。
そのことが、自分の固定概念を打破するきっかけになるのです。
3つ目は、分析を通して、職場の一体感を醸成することです。
全員参加でなぜなぜと考えるプロセスを通して、皆で頑張ろうという意識が生まれます。
そして、皆でなぜなぜで考えた結果は、教育内容としても残っていくのです。
あなたの職場では、このようなことはありませんか?
あなたの職場では、次のようなことはありませんか?
問題が発生した原因を一つに決め込んでいて、他の原因を考えようとしていない。その後、同様の問題が再発した。
なぜトラブルが発生したか、理屈立てて考えていないので、再発防止に繋がったかどうか怪しい。
問題の発生原因を理屈立てて説明・指導できる人が少ない。
一部の人だけが“なぜなぜ分析”をしているだけになっている。
問題が発生した職場の人たちが理屈を理解せず、対策後の維持管理が継続しない。
このような状態に1つでも思い当たる節がある方は、なぜなぜ分析を効果的に実施できていません。
そんな状態にならないように・・・
そんな状態にならないように、“なぜなぜ分析”により、モノゴトが発生する原因を理屈立てて、全員が納得がいく形で解決する。
そして、それを会社の知恵として積み上げていく。そんな「なぜなぜ分析」を目指していきましょう。
なぜなぜ分析実施の前に押さえておきたいポイント
それではここからは、なぜなぜ分析を行う前に押さえておきたい、いくつかのポイントについて確認していきたいと思います。
なぜなぜ分析を行なう上での大前提
まずは、なぜなぜ分析を行なう上での大前提について確認します。
なぜなぜ分析を行なう際には、次の前提事項を理解しておくようにしましょう。
行動と姿勢の視点では、次の3つを押さえておきましょう。
- 5ゲン主義で行動する。
- 三直三現を忘れない。
- 要因・原因を決めつけない。
層別の視点では、次の4つを押さえておきましょう。
- MECEで漏れなくダブリなく。
- パレート図で優先度を決める。
- 4M視点を押さえる。
- 5W2Hで表現する。
言葉の視点では、次のことを押さえておきましょう。
- 言葉の持つ重要性を理解する。
それでは、各視点について、それぞれ概要を確認していきましょう。
行動と姿勢の視点
三現主義とは
まずは、行動と姿勢の視点についてです。
5ゲン主義の前に、まず三現主義とは、3つの“現”を大事にする考え方です。
3つの“現”とは、現場・現物・現実の3つです。
必ず現場に足を運び、必ず現物を手に取り、現実を自分の目で見て確認する。
仕事、問題解決においては、この考え方が非常に大切です。
机上の空論ばかりの議論ではいけません。
必ず三現主義で問題解決を図るようにしていきましょう。
5ゲン主義で行動する
そして、なぜなぜ分析を行なう際には、三現主義に2つの“原”を加えた、5ゲン主義で行動する必要があります。
5ゲン主義とは、現場、現物、現実の三現主義に、原理、原則を加えた考え方です。
原理とは、物事を成り立たせる法則や、それを起こすメカニズム等のことを言います。
原則とは、多くの場合に当てはまる物事の決まりや規則のことを言います。
5ゲン主義でしっかりとモノゴトを捉えながら分析を行なうことで、より効果的な「なぜなぜ」を行なうことが出来るようになります。
※三現主義、5ゲン主義は下記のページで詳細を解説していますので、自信のない方はチェックしておきましょう!
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三直三現を忘れない
次に、三直三現についてです。
なぜなぜ分析は、ややもするとトラブルへの対応が遅れてしまうことにも繋がりかねません。じっくりと考えて分析することは大切ですが、三直三現を忘れないように注意をしなければいけません。
三直三現とは、問題が起きたら、「直ちに現場に行き」、「直ちに現物を調べ」、「直ちに現時点での手を打つ」ことを指します。
生産ロスを最小限にするために、すぐに打てる対策はすぐに打つことが基本です。なぜなぜ分析を行なうからと言って、ロスを拡大させることが無いように、注意をしていきましょう。
要因・原因を決めつけない
要因・原因を決め付けてしまわないように注意も必要です。
特にベテランの社員で経験と知識をたくさん持っているが故に、現物を見ずに指示を出してしまうことがあります。
過去に事例のない問題が発生した際、現物を見ずに分析を進めてしまうと、本質とは異なる真因・対策となってしまい、結果的に効果が得られないことにもなりかねません。
従って、トラブル発生時、過去の経験で原因を決めつけないためにも、現地現物で現象をしっかり見ることを大前提に、なぜなぜ分析を進めていくようにしましょう。
層別の視点
MECEで漏れなくダブリなく
それでは次に、層別の視点について確認していきます。
層別の視点の1つ目は、MECEです。
MECEとは、「漏れなく、ダブリなく」、全体を網羅することを指します。
真因を確実に特定するためには、MECEが不可欠です。
※MECEに関しては、下記のページで詳細を解説していますので、自信がない方はチェックしておきましょう!
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パレート図で優先度を決める
層別の視点の2つ目は、パレート図です。
日々の仕事の中では、様々な問題が発生します。
従って、対策後の効果が大きいものから、優先順位を付けて実施していくことが必要となります。
そこで活用されるのが、パレート図です。
パレート図は、「全体の中で大きな影響を占めるものが何であるかを明確にし、重要な問題を特定するための手法」です。
パレート図の主な使用目的は、下記が挙げられます。
- 重点的に取り組む問題を特定する
- その影響がどの程度か把握する
- 改善前と改善後の効果を確認する
こちらの簡易的なイメージ図で示すように、例えば、不良要因別に分類し多い順から並べ、不良全体の中で何が大きな影響を占めているかが見て分かるようになります。
この場合、なぜなぜ分析を行なう際には、重点思考で不良の多いものから順番に分析を進めて行くことにより、効率的な改善を進めていくことが可能となるのです。
データだけでは各分類項目の影響が分からないことがありますが、パレート図を書く事で、それが一目で分かるようになります。
影響を視覚的に見えるようにするツールとして、パレート図は有効な手段であることを覚えておきましょう。
※パレート図に関しては、下記のページで詳細を解説していますので、自信がない方はチェックしておきましょう!
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4M視点を押さえる
層別の視点の3つ目は、4M視点です。現場で起きるトラブル発生要因・不良発生要因等を洗い出す際は、4Mという視点が便利です。
4M視点というのは、人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)のことです。この4Mに、情報(Information)、環境(Environment)という2つの視点も加えることで、多くの場合は抜け盛れなく洗い出しが出来ます。
なぜなぜ分析では、4M+I,Eの視点で要因分析を行なうことで、抜け漏れのない対策の検討を進めていきましょう。
※4Mに関しては、下記のページで詳細を解説していますので、自信がない方はチェックしておきましょう!
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5W2Hで表現する
層別の視点の4つ目は、5W2Hです。
発生現象を調査する際や、要因を分析する際は、5W2Hの視点で表現をすることで、発生した問題や要因を正しく表現出来るようになります。
5W2Hとは、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、という切り口と、What(何が)、How(どうなった)、という切り口、Why(なぜ)、How Many(どのくらい)、という切り口のことです。
なぜなぜ分析を行なう上では、この5W2Hを意識して現地調査、文章の表現をしてみましょう。
※5W2Hに関しては、下記のページで詳細を解説していますので、自信がない方はチェックしておきましょう!
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言葉の視点
言葉が持つ重要性を理解する
それでは次に、言葉の視点について確認していきます。
言葉というものは、思っている以上に重要な役割を果たしますので、表現の仕方を軽く見てはいけません。
例えば、「炉内の温度が低い」現象に対して、「温度が低かった」と表現すると、「設定値が低かった」、というニュアンスを表します。
「温度が低くなった」と表現すると、「劣化をしてきた」、というニュアンスです。
「温度が低い時がある」と表現すると、「バラツキによって低くなったり高くなったりする」、というニュアンスです。
このように、「低かった」「低くなった」「低い時がある」という少しの言葉の違いでも、伝わり方が全く変わってくるのです。
以上のように、語尾によって要因や対策が変わるため、言葉の意味を「曖昧」にしないようにしましょう。そして、現象をよく調べないで「なぜなぜ分析」を行なってしまうと、どうしても曖昧な表現になってしまいがちです。
従って、現象をよく調べることで、言葉の意味を曖昧にせずに正しく表現できるように意識していきましょう。
問題解決となぜなぜ分析の繋がり
それではここからは、なぜなぜ分析は問題解決のステップの中でどのように活用されるのかを確認していきたいと思います。
問題解決のステップとなぜなぜ分析
改善を確実に進める“問題解決”ストーリー
それではまずは、「問題解決のステップとなぜなぜ分析」について確認しましょう。
改善を確実に進めていくためには、「問題解決ストーリー」に沿って考えていくことが大切です。
ステップ1:テーマの選定【何が問題かを明確にする】
ステップ2:現状把握と目標設定【どうなっているかを調査する】
ステップ3:活動計画の立案【いつまでに解決するかを計画する】
ステップ4:要因の解析【何が原因か深堀する】
ステップ5:対策の検討と実施【どうすればいいかを考える】
ステップ6:効果の確認【良くなったのかを確認する】
ステップ7:標準化と管理の定着【元に戻らないように歯止めを掛ける】
これが問題解決ストーリーです。このなかで、なぜなぜ分析はどのステップで活用するのでしょうか。
そう、ステップ4の要因の解析で主に活用します。
特性要因図とは
なお、なぜなぜ分析と似たような活用をされるものに、QC7つ道具の1つとしても有名な特性要因図があります。
特性要因図とは、問題になっている結果(特性)に対して、その結果に影響していると思われる要因を漏れなく洗い出すための手法です。魚の骨とも呼びます。
ここに示すイメージのように、ある特性・問題に対して、例えば4Mの視点「人」「機械」「材料」「方法」や「環境」等の視点から、影響していると思われるような要因を洗い出していきます。
この特性要因図を使って要因を洗い出すことにより、要因の漏れが少なくなります。
※特性要因図に関しては、下記のページで詳細を解説していますので、自信がない方はチェックしておきましょう!
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なぜなぜ分析と特性要因図はどう使い分ける?
では、この特性要因図となぜなぜ分析は、どのように使い分けたらよいのでしょうか。
次のように覚えておくと便利です。まず、問題解決を行う際、原因となっている可能性があるものを洗い出す時には、特性要因図(魚の骨)を使います。
そして、洗い出した要因の中から、原因となりそうなものに対しては、なぜなぜ分析で深堀りを行ないます。
このように、特性要因図で対象を見つけ、なぜなぜ分析で真因を見つける、というように覚えておきましょう。
なぜなぜ分析の2つのアプローチ
あるべき姿からのアプローチと原理原則からのアプローチ
続いて、「なぜなぜ分析の2つのアプローチ」について確認します。
なぜなぜ分析には、2つのアプローチがあります。
1つは、あるべき姿からのアプローチで、もう1つは、原理原則からのアプローチです。
あるべき姿からのアプローチは、あるべき姿とその問題になっていることを比較し、真因を探るアプローチで、象が比較的わかりやすく、犯人が単独犯に近い場合に適しています。
原理原則からのアプローチは、問題が発生する部分に焦点を当てて、それが発生する原理原則から真因を探るアプローチで、現象の発生メカニズムが比較的分かりにくく、犯人が複数犯の場合に適しています。
分析をする対象により、どちらのアプローチを活用するか、見極めながら分析を進めていくことが大切です。
あるべき姿からのアプローチ
あるべき姿とは、どのような姿なのか
それでは、あるべき姿からのアプローチについて、詳細を確認していきましょう。
まず、あるべき姿とは、どのような姿なのでしょうか。あるべき姿とは、「本来あるべき正しい状態」「こうでなければならない状態」のことを指します。
なぜなぜ分析におけるあるべき姿からのアプローチでは、実際に起きている事実としての「現状の姿」に対して、経験則による「こうあるべきだ」「こうでなければならない」という状態である「あるべき姿」とのギャップを、比較することで問題を探っていく方法を決定し、その後「なぜ」を繰り返しながら要因を探し出していきます。
あるべき姿からのアプローチによるなぜなぜ分析の進め方
それでは、あるべき姿からのアプローチによるなぜなぜ分析の進め方を確認してみましょう。“ボルトが回らない”という現象に対して、「あるべき姿からのアプローチ」による分析の仕方を確認します。
あるべき姿からのアプローチの例
今回の場合、現象は「ボルトが回らない」となります。例えば、下記のようなイメージです。
- ボルトの頭はつぶれていないか
- ボルトと板は接着していないか
- ボルトと板は錆びていないか
- スパナとボルトのサイズは合っているか
- スパナに掛けているトルクは十分か
この調査項目に対して、三現主義で調査を行ない、判定を行ないます。判定の結果、「NG」、つまりあるべき姿とズレがあると判明したものに対しては、更になぜを深堀りしていきましょう。
NGの項目に対して「なぜ」を繰り返す
この場合、「ボルトと板は錆びている」という、なぜ1の要因に対して、「両方ともスチール製である」「稼働中に水が掛かっている」といった、なぜ2の要因を深堀りしていくイメージです。
以上のように、あるべき姿から関連する項目を調査し、NGの項目に対して「なぜ」を繰り返すのが、あるべき姿からのなぜなぜ分析のアプローチとなります。
原理原則からのアプローチ
メカニズムやその発生条件を知りながら要因を探し出すアプローチ
それでは次に、「原理原則からのアプローチ」について確認します。
原理とは、物事を成り立たせる法則のこと、それを起こすメカニズム等のことを指します。
原則とは、多くの場合に当てはまる物事の決まりや条件のことを指します。
不具合現象を正確に把握するためには、なぜ現象が発生したのか、メカニズムやその発生条件を知りながら要因を探し出すアプローチが必要不可欠となります。それが原理原則からのアプローチとなります。
原理原則からのアプローチの事例
有名な原理原則からのアプローチの事例を確認してみましょう。
「機械が停止した」という現象に対して、なぜ機械は止まったのかを考えます。すると、「オーバーロードが掛かってヒューズが切れたから」という理由が挙がってきます。
それに対して今度は、「なぜオーバーロードが掛かったのか」を考えます。すると、「軸受け部の潤滑が十分でないから」という理由が挙がってきます。
それに対して今度は、「なぜ軸受け部の潤滑が十分でなかったのか」を考えます。
同じように、「潤滑ポンプが十分汲み上げていない」のはなぜか、「潤滑ポンプの軸が磨耗でガタついている」のはなぜか、「切粉が潤滑油に入った」のはなぜか、「ストレーナーが付いていないからだ」というような形で真因にたどり着くことができ、ストレーナーを設置するという有効な対策を打つことが可能となります。
原理原則からの「なぜなぜ」がしっかりと出来ていない場合、「ヒューズが切れたので、ヒューズを交換して完了」という安易な対策になってしまうことが往々にあります。再発防止に繋がらない安易な対策では、必ずまた再発しロスを発生させます。そうならないように、原理原則でのなぜなぜ分析をしっかりと行なえるような分析力を付けておくことが求められるのです。
原理原則からのアプローチによるなぜなぜ分析の進め方
それでは、原理原則からのアプローチによるなぜなぜ分析の進め方を確認してみましょう。
“ボルトが回らない”という現象に対して、「原理原則からのアプローチ」による分析の仕方を確認します。
原理原則からのアプローチの例
「ボルトが回らない」という現象を原理原則でなぜなぜを繰り返していくと、次のようになります。
なぜ1では、「ボルトと板との間の抵抗が大きい」という要因、なぜ2では、「ボルトにかかるトルクが小さすぎる」「ボルトと板がくっついている」という要因が挙げられます。「ボルトにかかるトルクが小さすぎる」ことに対しては、「ボルトとスパナの接触面積が小さい」「スパナにかける力が小さい」という要因が考えられます。
そして、「ボルトとスパナの接触面積が小さい」ことに対しては、「スパナのサイズがボルトの頭より大きい」「ボルトの頭が丸くつぶれている」というように深堀りされていきます。「スパナにかける力が小さい」という要因には、「腕力が足りない」といったことが考えられます。
一方、「ボルトと板がくっついている」ことに対しては、「塗料で覆われている」「ボルトと板が錆びている」といった要因を挙げることができます。
このように、なぜその状態が起きているのか、原理原則から「なぜ」を洗い出していくのが、原理原則からのアプローチによるなぜなぜ分析となります。
なぜなぜ分析における7つの分析テクニック
なぜなぜ分析を行う上でのの7つの分析テクニックは下記の通りです。これらの視点が満足しているかを確認しながら、なぜなぜを進めていくことで、より高い精度で分析ができるようになります。
① 文章を簡潔に書く!
② 事象を混在させない!
③ 逆から読んで意味が通っているか確認する!
④ 再発防止に繋がるまで「なぜ」を繰り返す!
⑤ 本質からズレた分析をしない!
⑥ 人間の心理面への原因追究はしない!
⑦ 「悪い」という言葉は使わない!
なぜなぜ分析まとめ
以上で学んだことをまとめてみましょう。
なぜなぜ分析とは?なぜなぜ分析のコツとは?
- なぜなぜ分析とは、「問題をただ処置するだけではなく、根本原因を対策することで再発を防ぐ考え方」のこと。問題解決では欠かせない分析手法
- 「なぜ」は必ず5回繰り返すことがMUSTではない。ただし、なぜを5回繰り返すくらい、しっかりと深堀りしなければ、真因にたどり着かないと言われている
- しっかりとなぜなぜ分析力が身に付くまでは、意識的に5回なぜを繰り返すことが大切
- なぜなぜ分析の3つの狙いは下記の通り。
1つ目:問題の根本原因を対策し、再発を防止すること
2つ目:物事の理屈を学び、新たな気付きを得ること
3つ目:分析を通して、職場の一体感を醸成すること
全員参加でなぜを繰り返し、知見を会社の財産として蓄積していくことが大切 - 5ゲン主義とは、現場、現物、現実の三現主義に、原理、原則を加えた考え方
- MECEとは、漏れなく、ダブリなく、全体を網羅する層別方法のこと
- 4M視点とは、人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)の4つのMの視点のこと
- 言葉を曖昧に表現すると、語尾によって言葉の意味するところが変わり、他の人への伝わり方が全く変わってしまう。問題や要因を正しく表現するために、言葉の表現の仕方には気を配ることが大切
- 対象を広く洗い出す際には特性要因図、その中から問題を深堀りして真因を見つけるのが「なぜなぜ分析」
- なぜなぜ分析の2つのアプローチは、あるべき姿からのアプローチと原理原則からのアプローチ
- なぜ現象が発生したのか、メカニズムやその発生条件を知りながら要因を探し出すアプローチが原理原則からのアプローチ
- なぜなぜ分析の分析テクニックは、下記の7つ。
① 文章を簡潔に書く!
② 事象を混在させない!
③ 逆から読んで意味が通っているか確認する!
④ 再発防止に繋がるまで「なぜ」を繰り返す!
⑤ 本質からズレた分析をしない!
⑥ 人間の心理面への原因追究はしない!
⑦ 「悪い」という言葉は使わない!
いかがでしたか?なぜなぜ分析は、実務においても使用頻度が高い原因追及手法です。
何度も活用することでコツを掴み、スムーズに問題を深堀りできるスキルを付けていきたいですね!
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