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動作経済の原則とは?4つの基本原則と3つの視点から動作改善の基本を学ぶ

作業動作をイメージする画像
戸神 猛

戸神 猛

工場改革コンサルタント

シチズン時計、ベンチャー系リチウム電池開発・製造会社で工場運営や生産技術業務を複数歴任。現在はコンサルタントとして現場改善や工場改革支援に尽力中。

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動作経済の原則とは

4つの基本原則で動作を体系化した「動作経済の原則」

動作経済の原則とは、最小限の疲労で最大の成果を上げられるように、最も良い作業動作を実現しようとする経済的な法則のことを言います。

動作経済の原則とは

動作改善では、単に作業者の動作を改善するだけではなく、材料、治工具、機械などの置き場所、形あるいはその働きなど、作業に関連する環境を含めて考えなければなりません。

それを動作経済の原則では、4つの基本原則という形で体系化しています。

動作研究の領域は、作業方法・体の動き、治工具の使用、作業域です。これらの領域に対して、人間にとって無理なく最適な方法へ改善を進めていくのが動作研究です。

さて、「人間にとって無理なく最適な方法」というのはどう考えたらよいのでしょうか?その指針になるのが、動作経済の原則です。何となく聞いたことがある人もいるかもしれません。

動作研究の領域

動作経済の4つの基本原則とは

それでは、動作経済の4つの基本原則について確認を進めていきましょう。動作経済の4つの基本原則とは、次の通りです。

動作の数を減らす

1つ目が、「動作の数を減らす」という原則です。
探す・選ぶ・考える・前置きを行っていないか、一発で掴めているか、一発で組立てているかなどの視点です。

動作を同時に行う

2つ目が、「動作を同時に行う」という原則です。
片手の手待ちが発生していないか、保持動作が発生していないかなどの視点です。

動作の距離を短くする

3つ目が、「動作の距離を短くする」という原則です。
不必要な大きい動作で行っていないか、長い距離を動いていないかなどの視点です。

動作を楽にする

4つ目が、「動作を楽にする」という原則です。
やりにくい姿勢で動作していないか、力が必要な動作になっていないかなどの視点です。

これらの視点を活用し、動作改善を進めていくことが動作経済の原則の使い方となります。

4つの原則×3つの視点=合計12個の視点

そして、以上の4つの基本原則に対して、3つの視点で考えていきます。

1つ目は動作方法の視点、2つ目は作業場所の視点、そして3つ目は治工具および機械の視点です。

つまり4つの原則×3つの視点、合計12個の視点で作業の「こうあるべき」が定義されているのです。

動作経済の4つの基本原則

動作経済の原則 12個の視点をチェック!

動作経済の原則 合計12個の視点の一覧

一覧にするとこのようになります。それぞれについて順番に確認していきましょう。

動作経済の原則 合計12個の視点の一覧

1つ目の原則「動作の数を減らす」

動作方法の視点

まずは、1つ目の原則「動作の数を減らす」における「動作方法の視点」について、3つの切り口を確認します。

動作方法の視点

1つ目は、不必要な動作を排除することです。

動作数が多ければ作業時間が長くなるため、とにかく不必要な動作をなくします。
必要と思われる動作でも、手順変更・組み替えにより削減できる可能性もあります。

不必要な動作を排除する

2つ目の切り口は、目の動きを少なくすることです。

目の動きが大きいと、その分だけ動作を遅くします。
目の動線が最短になるようなモノの配置や作業の流れをつくることが必要です。

3つ目の切り口は、2つ以上の動作を結合することです。

取る・置くを同時に行う等、作業動作を同時化すると、作業時間を短縮できます。
簡単に言えば、1回の動作で多くの動作をやってしまうことが望ましいということです。
例えば、部品を運びながら向きを直す、1回に数個の部品を掴むなどが該当します。

目の動きを少なくする

作業場所の視点

次に、作業場所の視点について、3つの切り口を確認します。

作業場所の視点

・材料や工具は作業者の前方一定の場所に置く
・材料や工具は作業順序に合わせて置く
・材料・工具は作業しやすい状態に置く

作業者の前方一定の場所かつ容易に手の届く作業範囲内にあれば、身体を曲げることなく取ることができます。

さらに、作業順に置かれていると、捜す・選ぶ・迷う動作が不要になります。取りやすいように置いておくと持ち替えが発生しないことにも繋がります。

これらは、不要なモノの整理、2S3定の徹底が不可欠となります。

不要なモノの整理、2S3定の徹底が不可欠!

治工具および機械の視点

次に、治工具および機械の視点について、4つの切り口を確認します。

治工具および機械の視点

1つ目は、材料・部品の取りやすい容器や器具を利用することです。注意や方向調整の必要がなく、部品がいつも手前に来ていて、単純な掴み動作で取れることが必要です。

2つ目は、機械の移動方向と操作方法を同じにすることです。設備が人の動きと逆の方向に動くように設計すると、習熟までに時間が掛かり、慣れてからもエラーを起こしやすいからです。

3つ目は、2つ以上の工具は1つに結合することです。使用頻度の多い工具同士を組み合わせると、探す・取る動作を少なくすることができるからです。

治工具および機械の視点について、4つの切り口(1)

4つ目の切り口は、治具の締付けには動作の少ない機構を利用することです。

治具、操作時間は加工を主体とみれば付帯作業です。従って、操作は最も簡潔で、しかも十分目的を満足できることが望ましいと言えます。ボタン操作によるエア締め、油圧締め等は代表的な事例です。治具締付けの機械化であり、同時化でもあり、疲労の軽減と作業時間の短縮に役立ちます。

ワンタッチ治具等の設計により、いかに付帯作業・付随作業を削減できるかを考えるようにしましょう。

治工具および機械の視点について、4つの切り口(2)

2つ目の原則「動作を同時に行う」

動作方法の視点

それでは続いて、2つ目の原則「動作を同時に行う」における「動作方法の視点」について、2つの切り口を確認します。

「動作を同時に行う」における「動作方法の視点」

1つ目は、両手は同時に動かし始め同時に終わるようにすることです。
可能な限り両手が同時に動いていることが好ましいとされています。片手だけの作業と両手同時作業では最大2倍の差が発生するからです。一方の手が、もう片方の手の影響で手待ちが発生し、動作の遅れが出ないようにすることが大切となります。

2つ目は、両手は同時に反対・対称方向に動かすことです。
人間にとって、同一動作を繰り返すことが最も楽な動作です。運動方向が対称的であれば両手相互の運動のバランスが取れ、時間的ズレを解消しやすいからです。

動作方法の視点

作業場所の視点

次に、作業場所の視点について切り口を1つ確認します。

作業場所の視点

両手の同時作業ができる位置に作業場所を配置するようにしましょう。

作業場の配置が悪いために、両手で可能な作業でもそれができない場合があります。理想的な作業台の配置は左右対称形で、モノの流れは左から右へ行くのが望ましいとされています。

両手の同時作業ができる位置にする

治工具および機械の視点

次に、治工具および機械の視点について3つの切り口を確認します。

治工具および機械の視点

・対象物の長時間の保持には保持具を利用すること
・簡単な作業または力を要する作業には足(脚)を使う器具を利用すること
・両手の同時動作ができる治具を考えること
これらの切り口から検討するようにしましょう。

片手が対象物をずっと保持している状態は、片手が使用できていない状態と同じです。保持具を使用するなどによって手を開放し、両手使用が可能な作業に変更します。保持具を利用することで、部品の安定が良くなり、作業性も良くなります。

保持具の例としては、トレー置き台車が挙げられます。トレーを手に持っていると、ピッキングでモノを入れる時に片手しか使えません。トレーを置く台車を使うことで、両手作業ができるようになります。

治工具および機械の視点について、3つの切り口

3つ目の原則「動作の距離を短くする」

動作方法の視点

次に、3つ目の原則「動作の距離を短くする」における「動作方法の視点」について2つの切り口を確認します。

「動作の距離を短くする」における「動作方法の視点」

・動作は最適身体部位で行うこと
・動作は最短距離で行うこと

作業には適正な作業域があります。作業域は、上から見た場合、ここに示すように分類されます。お腹の前付近の「最適作業域」、肘を支点にして作業が出来る範囲である「正常作業域」、肩を支点に手を伸ばして作業が出来る最大範囲の「最大作業域」という3つです。横から見た場合も同様です。

ポイントとしては、作業は可能な限り最適作業域で行なうこと、それが難しい場合は正常作業域、最低でも最大作業域の範囲で作業が出来るように設計することです。

「一番効率的で楽な姿勢で作業を行なう」という視点は非常に大切です。作業を観察している際、これらの作業域から外れている場合は、人間工学として適していないため、ムダな動きに繋がっていると考えるようにしましょう。

最適作業域、正常作業域で作業を行うことを考える

作業場所の視点

次に、作業場所の視点について1つの切り口を確認します。

作業場所の視点について、1つの切り口

作業域は作業に支障のない限り狭くするようにしましょう。

作業域が必要以上に広いと、作業動作、特に歩行を増やしてしまいます。また、工場の面積をいたずらに専有することにもなります。組合せ作業を行っている工程は、機械持ち台数の増減にも関係し、能率を低下させる原因になります。

例えばこのように、スペースに余裕があるからといって、必要以上に作業域を広くしてしまうと、歩行距離が長くなり、スペースもたくさん取ってしまいます。そうではなく、作業域を必要最低限に抑え、歩行距離を短く、スペースも最小限とすることが大切です。

作業域は作業に支障のない限り狭くする

治工具および機械の視点

次に、治工具および機械の視点について2つの切り口を確認します。

治工具および機械の視点について、2つの切り口

1つ目は、材料の取出し・送出しには重力を利用した器具を利用することです。

材料の取出しは、治具にテーパーを付けたり、置き場を斜めにすると取りやすくなります。部品の送出しに落とし送りやシュートを利用すると、次の工程に送る・材料を動かすという動作がなくなります。重力の活用ですね。 治具にエアーによる吹き飛ばしや機械的なはね出し装置をつけて、自動的にコンベヤーで搬出する方法などもよく使われます。

材料の取出し・送出しには重力を利用した器具を利用する

2つ目は、機械の操作は動作の最適身体部位で行えるようにすることです。

治工具や機械は、最も疲労が少なく、作業しやすい身体部位が使えるように考えなければなりません。最も少ない動作時間で目的が遂行できるような身体部位を使うことを検討することが必要です。

例えば、ハンドキャリーを使う際には、最下段に一番頻度が高いものを配置します。使うものの操作の位置によって、最適な部分で行う頻度が上がるように考えることが基本です。

機械の操作は動作の最適身体部位で行えるようにする

4つ目の原則「動作を楽にする」

動作方法の視点

次に、4つ目の原則「動作を楽にする」における「動作方法の視点」について3つの切り口を確認します。

4つ目の原則「動作を楽にする」

1つ目は、動作は制限のない楽な運動に近づけることです。

制限のない動作というのは、作業中に発生する「調節」「注意」「停止」が各動作の都度発生しないことを指します。これらが度々発生していたのでは、作業は安定せず、効率も上がりません。また、被加工物、治工具の重量および抵抗もなるべく少なくて済むように考慮しましょう。

2つ目は、動作では重力や他の力(機械力、慣性力、反発力等)を利用することです。

力を要するものはスプリングや油圧、エア圧などを利用すると、人間が楽に動作するための補助に活用できます。人間が出すことのできない力を補ってくれることもあり、作業支援アシストスーツ等もこの一種です。

「動作を楽にする」における「動作方法の視点」について、3つの切り口(1)

3つ目は、動作の方向やその変換を円滑にすることです。

人体各部の運動は、自然な動きが一番楽です。手の運動が急激な方向変換を行うことは慣性に逆らうことになり、著しく疲労を増すことになります。放物線の軌跡を描くような動作が疲労が少なく時間も早いと覚えておきましょう。

例えばこのように、慣性に逆らう動作は避けるようにします。このように、放物線の軌跡を描くような動作が人間にとって一番自然で楽であることは当然ですが、案外忘れられがちなので注意が必要です。

動作を楽にする」における「動作方法の視点」について、3つの切り口(2)

作業場所の視点

次に、作業場所の視点について切り口を1つ確認します。

作業場所の視点

作業位置の高さは最適にすることです。

作業台の高さは作業内容や対象者、力を要する仕事、指先の仕事等によって最適なものにする必要があります。例えば、座り作業の時、背もたれ、足置き台等を考慮します。材料等を床に置くことは、取扱いのたびに疲労が増し時間のロスになるため、避けるようにしてください。

例えば、小さい人が作業台の上で作業することは、この原則に沿った改善の1つです。また、直置き(じかおき)しているものを取りながら作業すると疲労が大きくなるため、昇降式の台などを使い、部品や材料を取りやすい高さから取り出せるようにする改善も有効です。

作業位置の高さは最適にせよ

治工具および機械の視点

次に、治工具および機械の視点について3つの切り口を確認します。

治工具および機械の視点

1つ目は、一定の運動経路を規制するために治具やガイドを利用することです。

一定の運動経路を規制するために治具やガイドを利用します。空間またはフラット面で位置合わせするより、基準となる面または軸があればそれだけ作業が容易となるからです。動作は治具やそれに付属したガイドにより規制されるので、一定の動作を繰り返すことができ、作業も容易となります。

例えばこのように、治具を既定の場所に合わせる場合、ガイドがないと、ズレが発生するだけではなく、気遣いによる疲労の蓄積にも繋がってしまいます。また、位置合せを感覚に頼ると、動作が余計に必要であることはもちろん、「確認する」という作業も入ってきてしまいます。

一定の運動経路を規制するために治具やガイドを利用する

2つ目は、握り部はつかみやすい形にすることです。

つかみやすいことで、作業の目的に応じて必要な力が楽に出せ、しかも作業性が良くなります。なお、一般的に、力を要するものについては、手のひらの接触面が大きい方が楽につかめると言われています。

3つ目は、見える位置で楽に位置合せできる治具にすることです。

治具が見える位置にあるかどうかは、材料や部品の位置合せとその確認の有無により作業時間に大きく影響します。作業姿勢そのままで、目で見て使える治具が望ましいと覚えておきましょう。

握り部はつかみやすい形にすること 見える位置で楽に位置合せできる治具にすること

全て暗記する必要なし!必要な時にこの表を使える状態にしよう

以上が12個の視点における、全28個の各種の切り口でした。たくさんあったので1度では覚えられないと思います。

全て暗記する必要はありませんので、必要な時にこの表を使える状態にしておきましょう。

12個の視点における、全28個の各種の切り口

動作経済の原則まとめ

以上で学んだことをまとめてみましょう。

動作経済の原則とは?

  • 動作経済の原則とは、最小限の疲労で最大の成果を上げられるように、最も良い作業動作を実現しようとする経済的な法則のこと
  • 動作経済の4つの基本原則は、動作の数を減らす、動作を同時に行う、動作の距離を短くする、動作を楽にする
  • 動作経済の3つの視点は、動作方法の視点、作業場所の視点、治工具および機械の視点
  • 動作経済の原則には、12個の視点における全28個の各種の切り口が存在する

いかがでしたか?動作掲載の原則の全体像はイメージできましたか?
動作経済の原則の考え方を活用し、作業をする人が無理なく最適な方法で作業が行えるような環境をつくっていきたいですね!

参考文献
・新版IEの基礎(著:藤田彰久 、建帛社、1997年)
・現場実践シリーズ IE7つ道具(著:杉原寛 他 、日刊工業新聞社、1993年)

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