教材制作のポイント「わかりやすい」の正体とは?【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑪】

目次
わかりやすい教材制作のポイント
今回は、教材制作の基本となるポイントを紹介します。製造業でも人事や教育の担当をされている方は、社内研修を企画したり、社内用の教材を作成したりする機会が多いと思います。わかりやすい教材の作成の仕方について解説します。
わかりやすいとは?
まず、「分かりやすい」の定義を確認しましょう。分かりやすい教材とは具体的にどういったものでしょうか?分かりやすいとは、脳内の情報処理時間が短いことであると言われています。人間の情報処理モデルは、図のような流れになっています。
たとえば、座学研修であれば受講者は、目や耳などの感覚器官を通じて情報を知覚します。講師が話している音声やしぐさ、スライドの文字、図表などを受け取る段階です。ワーク型の研修であれば、手の感触や嗅覚、味覚などを使う場合もあります。
次に、知覚した情報を認知・判断します。これは、個人が持つ記憶や経験、勘などを使って行われます。それから理解をする、というプロセスになります。
知覚してから理解するまでを情報処理時間といい、この時間が短ければ短いほど「分かりやすい」と感じることができます。逆に、時間が掛かってしまうほど「分かりにくい」と感じてしまうのです。
パッと見て大事なポイントが目に飛び込んでくるような資料。経験や知識を補い、判断を助けるような解説。こうした、受講者の情報処理を邪魔しない教材づくりが欠かせません。
資料作成で気を付けること
PowerPoint などで教材を作成する際も、最低限押さえておきたい基本があります。白い画面にただ文字を並べる、ただ表を載せる。それは誰でもできることです。ですが、つくりたいのは「受講者の理解が深まる効果的な教材」です。同じ内容について説明していても、その「見せ方」によって受講者の理解度は大きく変わります。
大事なのは見た目ではなく中身、という気持ちもあるかもしれませが、中身に興味を持ってもらうためには、パッと見た時の第一印象を良くすることが欠かせないのです。
KISSの法則
KISS の法則とは、「Keep it Short and Simple」の略で「伝えたいことは、短く、シンプルにまとめよう」という法則です。しっかりと伝えたい!と思うあまり、いつの間にか情報が山盛り…文章がどこまでも続く…結局何を伝えたかったのかわからなくなってしまう…こんな経験、ありませんか?分かりやすい教材をつくるならば、山盛りの情報や長すぎる文章は逆効果です。
KISS の法則を成立させる条件は、
➀必要ないものはスライドに載せないこと
➁記載内容を可能な限り要約すること
➂文章の形ではなく体言止めで記載すること
です。具体例で見ていきましょう。
下の画像がスライドとして画面に表示されたら、どうでしょうか?タイトルはついているものの、結論を理解するのに非常に時間がかかりませんか?
●文字の羅列になってしまっている資料
↓
●KISSの法則を意識して作成した資料
下の画像が、KISS の法則を意識して作成したスライドの例です。とてもシンプルになり、伝えたいことが目に飛び込んでくると思います。
今回の例では「冷房の推奨設定が28℃であること」と、28℃に設定すると基準に対して「13%電気代が安くなること」だけ伝えれば十分です。参考情報として、「期間消費電力量は28℃での計算」である記述を、小さく載せておくというように、大きさや色使いでメリハリをつけることも有効です。このスライドであれば、見た人が冷房の設定温度を28℃にする、という行動にも繋がりそうです。
当然のことですが、こうした資料を作成する際に、作成者自身が内容を理解できていないまま進めてはいけません。長々とした文章を要約する場合は、伝えたいポイントは何なのかを的確に捉える力が必要です。
いかがでしたでしょうか?資料を作成する際、「自分にはセンスがないから」とあきらめてしまっていた人も多いのではないでしょうか?
教材を作成する際、大切なのはセンスではありません。わかりやすさの本質を理解し、脳の情報処理時間を短縮するための構成を意識してみることで伝えたいことがスムーズに伝わる資料を作ることができるようになります。
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