製造業のマネジメント人材に求められるスキルとは【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑥】

目次
製造業の工場長の役割
前回のコラムでは、工場のマネジメント人材の役割についてお話させていただきました。今回は、マネジメント人材に求められる具体的なスキルとその身に付け方について解説していきたいと思います。
マネージャーが必ず知っておきたいカッツモデル
はじめに、職位の階層ごとに求められるスキルについて、代表的な考え方を紹介させていただきます。皆さんはロバートカッツが提唱したカッツモデルをご存じでしょうか?
経営者・幹部クラス層の「トップマネジメント」、中間管理職クラスの「ミドルマネジメント」、主任・リーダークラスの「ロワーマネジメント」の3つの階層において、それぞれ役職に応じて必要な能力の割合が異なるというものです。
必要とされる能力は3つあり、テクニカルスキル・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルに大別されます。
テクニカルスキルは、業務遂行のための専門分野に関するスキルです。具体的な例を出すと、溶接のスキルや組み立てのスキルといった実務的な技能が該当します。
ヒューマンスキルは、対人関係能力です。コミュニケーション・コーチング等の対人スキルを指します。
コンセプチュアルスキルは、概念化能力を指します。聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、あらゆる事象の本質を理解して判断するための能力です。わかりやすく言い換えると、「今この状況に置いて何が必要か」仮説を立てながら実行していく能力と言えます。
カッツモデルでは、トップマネジメント層にはコンセプチュアルスキルが、ミドルマネジメント層にはヒューマンスキルが、ロワーマネジメント層にはテクニカルスキルがそれぞれ重視される傾向があります。上位職になるにつれて、単純で一律的な教育による習得が難しいスキルの重要性が増していく考え方です。
現代の製造業に求められるドラッカーモデル
カッツモデルの次に、カッツモデルをもとにピーター・ドラッカーが提唱したドラッカーモデルについても紹介させていただきます。
カッツモデルでは、コンセプチュアルスキルは、どちらかといえば経営者などのトップ層において重視すべきスキルという位置づけでしたが、ドラッカーモデルでは、あらゆる階層の職位でも、コンセプチュアルスキルが等しく重要であるとされています。この考え方は、製造業のマネジメント人材に求められるスキルを考える上で非常に参考になる考え方だと思います。
コンセプチュアルスキルは、残念ながら一朝一夕に身につくものではありません。若年層の頃から少しずつ訓練をしていかないと、マネジメント層になってはじめて「何をしたらよいかわからない」ことに気が付くことになります。長年製造業の教育に携わらせていただく中で、多くの企業で工場マネジメント人材に対するコンセプチュアルスキル(概念化能力)に関する教育が圧倒的に不足していると感じます。工場長になってからではなく、一般層から役職に上がるまでに十分な経験ができていないことが大きな問題と言えるでしょう。工場マネジメント人材を育てるには、一般層から少しずつコンセプチュアルスキルを身に付ける訓練が必要なのです。
コンセプチュアルスキルの身に付け方
では、コンセプチュアルスキルを身に付けるにはどうしたら良いでしょうか?いきなりコンセプトスキルを身に付けようと思っても、何から手を付けて良いかわからないと思います。そこで、コンセプチュアルスキルの構成要素を細分化して考えてみたいと思います。
コンセプチュアルスキルを構成する3つの力
コンセプチュアルスキルは、大きく分けて以下の3つの能力に分けることができます。
1つ目は、経営方針/状況を正しく理解できる「現状把握力」。
2つ目は、自工場/自組織が取り組む課題を設定できる「課題設定力」。
3つ目は、その課題の解決に向けて組織を指揮できる「運営実行力」です。
この「現状把握力」「課題設定力」「運営実行力」を身に付けるための研修やワークを職場に合わせて実施することで、マネジメント層に求められるコンセプチュアルスキルの土台を育むことができます。また、コンセプチュアルスキルを身に付けるためには、多くの場合でテクニカルスキルやヒューマンスキルの能力も必要になるはずです。コンセプチュアルスキルの習得を主軸として、テクニカルスキル・ヒューマンスキルを紐づけるための研修を段階的に少しずつ取り入れることで、工場のマネジメント人材を育成することができるようになるのではないでしょうか。
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Lesson3:カイゼンの2種類のアプローチ(8:53)
Lesson4:三現主義、5ゲン主義とは(7:16)
Lesson5:ものづくりの3要素「QCD」とは(10:00)
Lesson6:PDCAサイクルとは(6:25)
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