従業員の「やりがい」を育てる!人材教育の仕組みづくり【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~④】

目次
従業員が仕事に求めるものとは
突然ですが、転職者が求職活動の際に重視するポイントは何だと思いますか?ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリー株式会社が行った転職経験者を対象とした調査結果によると、「転職について重視したこと」の第1位は「仕事内容のやりがい(58%)」、続いて「自己成長性(47%)」、「給与水準(47%)」となっています。勤務形態等の労働条件の項目も上位項目を占めていますが、仕事で自身の成長や充実感を得たいという前向きな動機が上位に来ているのが印象的な結果です。仕事は一日の多くの時間を費やすものですから、日頃より高い充実感や幸福感をいだきながら働くというのは人生をイキイキと豊かなものにするためにとても大切なことです。
出典:ウォンテッドリー、転職と副業に関する調査結果(2023)を発表:ウォンテッドリー株式会社
サービスプロフィットチェーンとは
さて、個人の働き方にとって大切な「やりがい」ですが、企業側の視点でも非常に重要な意味を持ちます。皆さんは、サービスプロフィットチェーン(SPC)という考え方をご存じでしょうか?SPCは「従業員満足度(ES)」と「顧客満足度(CS)」、「企業の収益」という3つの要素に関係する考え方です。ESがアップするとCSが高まり、最終的には企業の利益として循環されます。そして、業績が向上すると人材や生産性向上のためのさらなる投資が可能になり、さらにESが向上していきます。このように従業員・顧客・企業をチェーンのようにつなぐ良い循環のことを指す言葉がSPCです。そして、このサイクルの土台・起点となるのが従業員満足度(ES)です。
書籍「カスタマー・ロイヤルティの経営」の中でジェームス・L・ヘスケット教授は
・ESとCSとの間に99%の因果関係が認められた
・CSが平均水準以上だった店舗の78%が、ESでも平均水準以上だった
・ESが1%増加すると、CSが0.22%増加する
と報告しています。つまりESは、企業の成長の原動力とも言えるのです。
また、ES向上の要素については、以下の5つの項目があると言われています。
1. 企業理念やビジョンへの共感
2. 評価、マネジメントへの納得感
3. 仕事のやりがい、貢献度
4. 職場の人間関係
5. 快適な職場環境
これら5つの項目ですが、この多くは人材教育が関わる項目であることにお気づきでしょうか?仕事のやり方や正しいマネジメントの方法、組織人としての振る舞いや対人関係能力といった正しい知識やスキルを身に付けることがES向上に結び付いているのです。従業員満足度は人材教育により「つくっていく」ものであるともいえるのではないでしょうか。
やりがいの高め方
では、従業員のやりがいを高めるための人材教育とはどのようなものでしょうか?
こちらのコラムの中でも解説させていただいた通り、従業員が目指すべきロードマップ・上るべき階段を明確し、評価の定義を明確に設定した人材教育の仕組みを作っていくことは、やりがいを育むためにとても重要です。従業員それぞれの業務内容や職責レベルによって必要能力・技能を設定し、スキルレベルを管理するためツールとして、スキルマップを活用している企業も多いでしょう。ですが、従業員のさらなる成長をサポートするためにはスキルマップの管理だけでは不十分であることを覚えておかなければいけません。
基本スキルと実務スキルの違いを理解する
教育設計を考える際に整理して理解しておかなければいけないのが、「基本スキル」と「実務スキル」の関係性です。基本スキルとは、基本的に全部門に共通する仕事の基礎となるスキルのことです。この分野は企業によってはコーポレート部門において教育プログラムを設計しているかもしれません。一方で実務スキルは部門ごとに設計が必要な専門的な技能のことです。上述したスキルマップで管理される技能が実務スキルに該当するでしょう。この2つのスキルの関係性を図で表してみると右のような三角形のイメージになります。
ここで重要なのが、
①基本スキルだけではスキルの三角形は成立しない
②基本スキル(土台)が大きくなければ全体の三角形を大きくすることはできない
という2つの側面です。従業員が成長を実感するためには、土台となる基本スキルについても可視化をして管理していくことが重要です。しかし、多くの企業が実務スキルの管理はできていても、基本スキルの管理と設計に課題を抱えているように思います。まずは階層ごとの基本スキル要件を明確化し、求められる能力をブレイクダウンして定義づけをしていくことが必要となります。
すべての業務の土台となる基本スキル習得の定義を明確に設計することで、実務スキルの向上、さらにはやりがいの向上へとつながっていくのではないでしょうか。
次の記事を読む
工場長には何が求められている?未来を作る工場長の役割【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑤】
前の記事を読む
研修を座学で終わらせない!効果を最大化するためのポイント【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~③】
カイゼンについて学ぶ!学習コースのご紹介
カイゼンベースの学習コースでは、カイゼンに関する具体的な内容を動画や理解度テストにより学習することが可能です。詳細の学習や実践でのご活用をご検討の方は、是非ご活用ください。
学習コース「k1-01:アニメで学ぶカイゼン活動」
トヨタ生産方式は、今や生産活動の基本中の基本と言ってよい存在です。本講座では、トヨタ生産方式の2本柱である「ジャストインタイム」や「ニンベンの付いた自働化」をはじめとした、トヨタ生産方式の基礎知識をアニメーションで分かりやすく学習します。
学習コースの詳細
Lesson1:世界中で取り組まれる“カイゼン”(7:02)
Lesson2:カイゼンは誰のため?(8:13)
Lesson3:カイゼンの2種類のアプローチ(8:53)
Lesson4:三現主義、5ゲン主義とは(7:16)
Lesson5:ものづくりの3要素「QCD」とは(10:00)
Lesson6:PDCAサイクルとは(6:25)
Lesson7:トップダウンとボトムアップ活動(8:14)
Lesson8:カイゼンマインドを育てる4つの“機会”(7:35)
「Lesson1:世界中で取り組まれる“カイゼン”」の動画はどなたでもご視聴頂けます。
「Lesson2:カイゼンは誰のため?」の動画は無料会員登録を行うことでご視聴が可能になります。
資料請求はこちらから
サービス紹介資料・価格表を無料でダウンロードできます。お気軽にお問い合わせください。
関連コラム
-
理解が深まる社内教材の作り方【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑫】
MORE -
教材制作のポイント「わかりやすい」の正体とは?【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑪】
MORE -
管理職が知っておくべきヒューマンエラーの本質【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑩】
MORE -
職場全体でカイゼン文化を根付かせよう【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑨】
MORE -
間接部門でも業務改善!属人化から脱却しよう【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑧】
MORE -
なぜなぜ分析が苦手な人はなぜ多い?なぜなぜ分析の裏に隠れた3つの思考法【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~⑦】
MORE