人材育成のポイント「教育のジャストインタイム」とは?カイゼンベース【ものづくりは人づくり~カイゼン人材を育てよう~➁】

目次
ジャストインタイムという考え方
ジャストインタイム(JIT)、という言葉については、製造業にお勤めの皆様は良くご存じかもしれません。ジャストインタイムとは、トヨタ生産方式の2つの柱のうちの一つで、「必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ、流れるように停滞なく」造り、運搬することです。トヨタ生産方式の基本思想は、「徹底的な無駄の排除」です。「造りたいモノを、造りたい時に、造りたい分だけ造る」などといった自己都合を優先することは推奨されません。また、「供給したいモノを、供給したい時に、供給したい分だけ運搬すること」も避けなければなりません。
ジャストインタイムの考え方は主に製造業や物流業界などの現場で用いられている生産方式の一つですが、私は人材教育においても応用できる考え方だと思っています。
企業の教育における二つの軸
企業の教育のご担当者様とお話しさせていただくと、どのように全体の教育を設計したら良いかわからない、教育の計画の立てるのに苦労している、というお声をよく耳にします。企業の教育設計について聞かれたときに私がよくお話しさせていただくのが、「教育設計は範囲と深さの2軸で考える」というものです。「範囲」というのは教育の分野・内容についてどの範囲まで教育を行うかを明確にするという視点。もう一つの「深さ」というのは、理解度・定着度の深さを適切に設定するという視点です。本日はこの2つの軸のうち「範囲」に絞って深堀をさせていただきます。
教育の「範囲」を決める
どの範囲まで教育をおこなうか、を体系的に設計したものに人材教育体系というものがあります。一般的に教育体系というと、役職階層別に研修や教育メニューを設定されたものをイメージされる方がほとんどだと思います。教育担当の方の多くが、この教育メニューを考えるのに苦労しているように思います。ですが、役職階層別に研修や教育メニューを決めるだけで、教育の「範囲」の設定は十分でしょうか?残念なことに、人材教育を意味のあるものするためにはこれだけでは足りないかもしれません。なぜなら、目指すべき人物像や組織像、人材開発の方針や教育の全体像が明確でなければ、単なる「研修体系」であって人材を中長期的目線で育てるための「教育体系」とは言えないからです。
言い換えると、人材教育には、会社が従業員に対して何を求めているのか、どんな能力を期待しているか等の定義が不可欠です。
そして教育メニューは、従業員一人一人が自分の目指すべき姿を理解できる仕組みや環境の上に設計される必要があるのです。
「木を見て森を見ず」に要注意
教育設計のご支援をさせていただいていると、どのような研修メニュー・教材にするかということばかりに気を取られ、その前提となる求める人物像やスキルの定義が曖昧なまま教育体系の設計をはじめる担当者の方が少なくありません。これではまさに「木を見て森を見ず」です。全体を見失って手段ばかりが先行してしまい、目的が見えなくなってしまっています。短期的には問題がないかもしれませんが、継続的なスキルアップや能力開発を考えると、そう遠くない未来に限界を迎えてしまいます。目指すべき明確なゴールを決め、学習する側の従業員一人一人が意味や目的を理解し取り組むことで、知識や能力の定着は格段に上がります。目指すべき人物像・スキルのロードマップを、企業・従業員の双方が共通認識として持つことで、中長期的な人材教育を確実に進めることができるのです。
教育の「ジャストインタイム」を考える
冒頭にお話しさせていただいた、ジャストインタイムの話を思い出してください。「教育したいことを、教育したい時に、教育したい分だけ」そんな教育設計になってしまっていませんか?
「必要な人に必要な分野の教育を必要なタイミングで無理なく実施する」。これが私の考える教育のジャストインタイムです。会社は、そのために必要なツールと環境を平等に準備・提供し、一歩一歩ステップを上がっていくためのサポートを継続することが大切だと考えています。
人材教育は時間がかかるものです。一歩一歩迷わず進めるように、従業員が目指すべきロードマップ、上るべき階段を明確にするところから始めてみると良いかもしれません。
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カイゼンについて学ぶ!学習コースのご紹介
カイゼンベースの学習コースでは、カイゼンに関する具体的な内容を動画や理解度テストにより学習することが可能です。詳細の学習や実践でのご活用をご検討の方は、是非ご活用ください。
学習コース「k1-01:アニメで学ぶカイゼン活動」
トヨタ生産方式は、今や生産活動の基本中の基本と言ってよい存在です。本講座では、トヨタ生産方式の2本柱である「ジャストインタイム」や「ニンベンの付いた自働化」をはじめとした、トヨタ生産方式の基礎知識をアニメーションで分かりやすく学習します。
学習コースの詳細
Lesson1:世界中で取り組まれる“カイゼン”(7:02)
Lesson2:カイゼンは誰のため?(8:13)
Lesson3:カイゼンの2種類のアプローチ(8:53)
Lesson4:三現主義、5ゲン主義とは(7:16)
Lesson5:ものづくりの3要素「QCD」とは(10:00)
Lesson6:PDCAサイクルとは(6:25)
Lesson7:トップダウンとボトムアップ活動(8:14)
Lesson8:カイゼンマインドを育てる4つの“機会”(7:35)
「Lesson1:世界中で取り組まれる“カイゼン”」の動画はどなたでもご視聴頂けます。
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