成果を出す管理者になるための初級管理職のセルフマネジメントのコツ
目次
セルフマネジメントとは
マネジメントは、組織に成果を挙げさせる為の道具、ツール、機能と定義されています。
本ページでは、中堅社員・主任・チーフ・係長等の「マネジメント手前の方々」を対象に、「マネジメントという概念」を理解して、自分自身をマネジメントするようになるためのエッセンスを解説しています。
初級管理職のセルフマネジメントを学び、成果を出す管理者を目指しましょう。
はじめに
ドラッカー博士の重要な言葉
はじめに、プロローグとして、ドラッカー博士の重要な言葉を皆さんにお伝えしたいと思います。
マネジメントは人の振る舞。真摯さは学べない。だから真摯な人を選ぶしかない。
マネジャーの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジャーができなければならないことは、そのほとんどが教わらなくても学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得する事のできない資質、初めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。
このドラッカー博士の言葉、あなたはどう感じますか?正直、誠実、高潔。マネジメントを行なう人物は、これらの言葉が当てはまる人がなるべきである、という言葉です。
自問自答のセルフチェック
皆さんがこれから初級管理職として、マネジメントの一員に加わるという立場であるならば、ここに示している「自問自答のセルフチェック」をしてみましょう。
全部で6項目あります。Yes/Noで答えてみましょう。
さて、どういう結果になるでしょうか。そこは皆さんの真摯さ次第です。
① 結果や成果を自分に都合よくごまかしたりはしない。
② 物事や人間と真正面から真剣に向き合っていける。
③ 不正や腐敗を見ていて放置しない。他人事で逃げない。
④ 我欲私欲を抑えて社会に貢献することを選択できる。
⑤ 周囲の人々の「悪意を持った行動」に同調しない。
⑥ 誰かの足を引っ張って邪魔したり妨害したりしない。
さて、いくつYesがありましたか?
私たち人間は弱い生物です。だからこそ真摯さが必要となります。
自己の弱さに負けると、「セルフマネジメント」はできません。
今からでも自己自身に対する厳しさを養うことが不可欠なのです。
マネジメントの役割
P・F・ドラッカー博士によるマネジメントの役割
まずは、「マネジメントの役割」についてです。
ドラッカー博士曰く、マネジメントには2つの大きな役割があります。
まず1つ目は、「マネジメントには、自らの組織を通して社会に貢献する役割がある。」ということです。
具体的には、
① 自らの組織に特有の使命を果たす。
② 仕事を通じて働く人々を生かす。
③ 自らが社会に与える影響を処理すると共に、社会の問題に貢献する。
という3つが挙げられています。
もう1つは、「マネジメントは管理する。」ということです。
成果を上げること、人を生かすこと、社会に与える影響を処理すること、社会に貢献すること。
これらの課題すべてを今日と明日のバランスのもとに果たすこと。
これがマネジメントの大事な役割として説明されています。
実はこの2つ、結局1つのことを言っています。
私たちは組織を通じて、人を活かし、社会に貢献し、具体的な成果を上げる、そのための役割として、マネジメントが必要になるということです。
PDCAサイクルの基本
マネジメントの役割を果たすために必要な最も基本的な概念は何だと思いますか?
そう、皆さんご存知の「PDCAサイクル」です。
ルーティンワークのマネジメントスタイルとなります。
PDCAは、Pは、Plan:計画を立てること、Dは、Do:計画を実行すること、Cは、Check:計画と実績の差異を見ること、Aは、Action:次の計画に反省を活かすことを指しており、このサイクルでマネジメントすることにより、スパイラルアップし、成長進化が遂げられていきます。
PDCA、PDCA、PDCAと、少しずつ、少しずつ成長進化を遂げていくことになります。
STPDサイクルへの進化
PDCAサイクルの更に上にあるのは、イノベーティブなマネジメントスタイルである、STPDサイクルへの進化の流れです。
STPDサイクルとは、Sは、See:現状を観察すること、Tは、Think:真因を探求すること、Pは、Plan:計画を立てること、Dは、Do:試行錯誤すること(正解の無い状況を打開する)というサイクルを指しています。
STPDサイクルの最も重要なことは、「現状打破するために、まずは、SeeとThinkがある」ということです。
現状を観察し、その真因を探求することによって初めて、前年とは連鎖しない、不連続な変革的取り組みを成すことが可能となるのです。
To Doリストにしてみよう!PDCA
それではここでエクササイズです!明日あなたがやるべきことを、ToDoリストにしてみましょう!日々の自分の仕事のPDCAを回す訓練です。
次の通りに進めてみましょう。
ステップ1:付箋紙8枚に明日の予定を書きます。
ステップ2:付箋紙を優先順位順に並べ、午前中の予定に入れます。
ステップ3:午後予定と急がない予定を午後に入れます。
ステップ4:実施済みは付箋を廃棄します。
ステップ5:残った予定は明日の午前中に組み込んでいきます。
さぁ、実際にやってみましょう!
To Doリストにしてみよう!STPD
PDCAのエクササイズが出来たら、一歩上のエクササイズ、STPDサイクルにチャレンジしてみましょう!
次の手順で実際に行ないます。
ステップ2-1:良く先送りされる作業や予定を「観察」します。
ステップ2-2:「観察」したことから、明らかになった真因を「考えて」みましょう。なぜなぜなぜと、最低限3回は深堀りしてみてください。
ステップ2-3:真因を解決する「施策を複数設定」してみましょう。例えば、下記の視点で設定していきます。
- 必要性がないかもと考え、あえて「一旦止めてみる」
- 作業を効率化できないか模索してみる
- 他に成功している事例から学ぶ
- その作業以外で、目的を達成できることを編み出す
ステップ2-4:試行錯誤を繰り返します。例えば、下記の試行錯誤を継続的に繰り返していきます。
- 体系的に段階的に廃棄する
- 継続的に改善する
- 成功・機会を探求する
- イノベーションを試みる
さぁ、みなさんいかがでしたでしょうか?
このエクササイズはセルフマネジメントにおいては非常に大切な視点です。是非実践してみてください!
マネジメントと目標管理
マネジメントを実践する上での大切な考え方①
続いて、「マネジメントと目標管理」について確認していきます。
ドラッカー博士から学ぶことができる「マネジメントを実践する上での大切な考え方」が2つあります。
1つ目は、「自己管理による目標管理こそ、マネジメントの哲学たるべきものである。」ということです。
- 目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントすること。
- 自己管理による目標管理は、人間というものが責任・貢献・成果を欲する存在であると前提する。
- われわれは、人間というものがほぼ期待どおりに行動することを知っている。
ドラッカー博士は、自己管理による目標管理こそ、最もマネジメントの基本になる考えだと言っているわけです。
マネジメントを実践する上での大切な考え方②
もう1つの考え方は、目標は自らの組織があげるべき成果を明らかにしなければならないということです。
- 目標は、組織全体の目標から引き出したものでなければならない。
- 目標は、短期的な視点と共に長期的な視点から規定しなければならない。
- 目標は、組織への貢献によって規定しなければならない。
つまりドラッカー博士は、目標の設定というものが、マネジメントを実践する上で、最も重要であるということを訴えているわけです。
目標による管理と自己管理
それでは、目標による管理と自己管理について概念を確認します。
ここには2つの図を示してあります。
左の図が、間違った「目標管理」(ノルマの分配方式)です。
実はこの状態がよく見かけられます。いわゆる、組織の上位下達の方式です。
組織目標が、会社・組織の集団責任となり、役割と責任の曖昧化が起こります。
それに対して、右側に描いてあるのが、自己管理・セルフマネジメントの図です。
組織目標と個人目標とを連鎖させ、役割と責任の自己認識に基づいて、自己管理とセルフマネジメントが行なわれます。
これにより、自己決定による成長動機と、組織貢献へのコミットメントが引き出されていくという構造になっていくのです。
我が国日本での目標管理事情
では、我が国日本での目標管理事情はどうなっているのでしょうか。
残念ながら、間違った「目標管理」(ノルマの分配方式)がよく見られるのが実情です。
どのような不具合があるのか、いくつか挙げてみます。
- マイクロマネジメント:逐一行動監視する、人を信用しない
- 結果管理マネジメント:プロセス無視・目標達成すればOK
- 放置放任・ノーマネジメント:計画だけ与えて後は無視放置する
- 集団責任・五人組マネジメント:チームで共同責任を取らせる
- 目標がそもそも「ない」:会社全体の目標だけ
このようなマネジメントでは組織も個人も成長していかないのは火を見るよりも明らかです。
なぜ日本の目標管理はズレてしまったのか?
なぜこのような形で、日本の目標管理はズレてしまったのでしょうか。
2つの理由が考えられます。
1つは、日本の会社が、年功序列システムだからです。目標と無関係に、年齢によって給与も役職も上昇していくという考え方です。
もう1つは、前年の前例重視だからです。前年比だけで物を考える傾向性があります。
しかし、現在のように、高度成長が見込めない安定成長時代、むしろデフレスパイラルで年々下がっていく経営環境の中では、これらのやり方はまったく通用しなくなっていることを認識せねばなりません。
今一度、本来のマネジメントの考え方、自己管理とセルフマネジメントによる目標管理が大事であることをしっかりと認識することが大切です。
あなたが自分自身の「健康管理」をするならばどうするか?
それではエクササイズです。
あなたが自分自身の「健康管理」をするならばどうするか?このスライドに則して考えてみましょう。
一番左に書いてあるのは、考えられ得る健康管理の様々な切り口です。
そして、右側に書いてあるのは、原因系と結果系をロジックツリーで整理したものとなります。
真ん中にブラックボックス(正解のない施策群)がありますが、ここが一番のポイントです。
原因系に集中していくことにより、「セルフマネジメント」になっていきます。具体的には、
- 食事内容の見直し
- 夜の飲酒等の食事の改善
- 残業時間の改善
等に取り組むことによって、はじめて自分自身の健康管理を実践するということが可能になるのです。
漠然と一番左にあるような項目を、「さあ管理しよう」と言っても、なかなか成果に繋がらないですよね。
事例研究
セルフマネジメントを徹底することの重要性
それでは早速、事例研究を行なっていきましょう。
プランプラン、ドゥドゥ巡り、チェックレス、結果オーライという4つの視点の事例から、セルフマネジメントを徹底することの重要性について学びます。
プランプラン = 計画倒れの弊害①
まずはプランプラン、計画倒れの弊害の事例です。
1つは、「計画の立案に全力を注ぐが、計画が発表された後は関心が薄れている。」という現象です。
特に大企業に多い事例で、俗に「プランプラン」と揶揄されている現象のことです。
計画立案には、3か月近く莫大な労力を注ぐものの、発表後はメンバーに丸投げ状態になり、後は形式的に「結果」だけ集計して記録するだけになります。
または実行段階のプロセスには無関心のままになります。
ほとんどが成り行き任せになり、計画達成は意識されません。「運よく棚ぼた」ラッキーでもOKとなってしまうのです。
プランプラン = 計画倒れの弊害②
もう1つ、「期初の計画が、4半期ごとに激変して、何が計画なのかが不明になる。」という現象もあります。
特に中堅企業や零細企業に多い事例です。
四半期が経過し計画が未達成の場合、第2四半期に未達分が上乗せされます。
第2四半期も未達になると、第3四半期に上乗せされ、期末に未達成だと来期に上乗せされるというように、いつまで経っても計画の修正や変更を余儀なくされます。
当初見込みの計画とはおよそ異なる計画が次々と作成されて、何が目標だったのかも、メンバーは不明なまま「計画」だけが独り歩きしてしまうのです。
日本の職場において、一番多くみられるのは、このプランプランといわれる事例です。
みなさんの職場はどうでしょうか。
計画を作ることは一生懸命やりますが、作って終わり。これでは成果を出すことはできません。
ドゥドゥ巡り = 成り行き任せの弊害①
2つ目は、ドゥドゥ巡り、成り行き任せの弊害の事例です。
1つは、「実行段階になると、計画した以外のことが多忙になる(場当たり的な火消しに振り回される)」という現象です。
計画した行動や目標があるのに、緊急事態が次々と発生してその緊急事態に時間の大半を取られてしまいます。
緊急ではないが「重要な戦略的な行動」は常に先送りされます。
場当たり的な火消し作業によって、さも仕事をしているような錯覚に陥ります。
ドゥドゥ巡り = 成り行き任せの弊害②
もう1つは、「事前に想定していた計画内容とは別の「棚ぼた」ラッキーがあると、計画していたことは事実上なかったことにされる、いわゆる結果オーライ」です。
計画していた成果よりも、想定外の成果が出てくるともう計画していたことはしなくなります。
従って、成り行き任せの状態なので「棚ぼた」ラッキーがないと計画は未達成に終わってしまいます。
ビジョンや戦略等は「絵に描いた餅」になり、生真面目に取り組むよりは「放置」する方が当たり前になる風土が生まれます。
これらも、日本の企業・組織の中ではよくみられる事例です。
みなさんの職場はどうでしょうか。
チェックレス = レビュー無しの弊害①
3つ目は、チェックレス、レビュー無しの弊害の事例です。
1つは、「計画が未達成でも、各部署が横並びならば特に問題視されない(横並び現象)」です。
全体的に「黒字で事なきを得れば」各部署が未達成でも無関心のままになります。
赤字にならずに収支トントンの結果ならば未達成は不問として扱われます。
そもそも期末のレビューがないがしろにされます(計画ほど真剣にやらない)。
全部署が「横並び未達成」ならば特に問題視されない(来期頑張りましょう)。
チェックレス = レビュー無しの弊害②
もう1つ、「計画が未達成でも、トライ(試行)ならば〇になる(結果として◎や〇だらけの結果になる)」現象です。
結果が出なくてもトライ(試行)すれば〇扱いになります。
最後には評価に関係ないと皆が適当に流しています。
無理して「達成」しても、◎しかつきません(評価が報酬に繋がらない)。
計画未達成の部署なのに、結果は〇◎だらけで意味が無い状態です。▲や✖を書く習慣がなく、書いても評価に関係しません。
チェックが曖昧なために、結果をレビューしなくなれば、具体的な成果を刈り取ることはできなくなってしまいます。
みなさんの職場はどうでしょうか。
結果オーライ = 棚ぼた成果でもOKの弊害①
4つ目は、結果オーライ、棚ぼた成果でもOKの弊害の事例です。
1つは、「多くの組織は「ノーマネジメント」が当たり前になっている、つまり人事考課が無い状態」です。
人事考課をする際に、評価基準が曖昧模糊としているので結果オーライになります。
努力やチャレンジが見過ごされており、プロセスの重要性が無視されてしまいます。
最終的には「上司の好き嫌いが評価を決める」ので、人事考課は意味がない状態です。
優秀な人材は正当な評価や人事考課がある会社に去ってしまいます。
結果オーライ = 棚ぼた成果でもOKの弊害②
もう1つは、「期初の計画数字が四半期ごとに変化するので、何が真実の計画達成か不明になる(見かけの数字だけ)」現象です。
好調な部署には、次々と不調な部署の数字が上乗せされます。
不調な部署は、四半期毎に数字の目標が減額されてしまいます。
運よくたまたま期末に数字を達成すると、来期に大きな上乗せがあるので、多くが寸止めし、99%~97%程度に自己調整してしまいます。
これもよくある話です。
会社として、全体的に目標を達成すれば、各部署の目標が未達成であっても、また各構成員の目標が未達成であっても、ほとんどお咎めなしというのが、現状の日本の組織なのです。
何かイメージできましたか?
これら4つの事例研究を通じて、マネジメントの最も根底にある考え方は何かイメージできましたか?
大切な事は、セルフマネジメントを徹底して、4つの事例にあるように、職場にはびこるノーマネジメントの廃止をすることにあります。
ノーマネジメント現象に対処するということ、管理者任せにしないということ、これを徹底的に実践していかなければならないのです。
マネジメントの四面展開とは
マネジメントの四面展開とは
それでは早速、マネジメントの四面展開について確認していきます。
マネジメントの四面展開とは、次の4つのことを指します。
1つ目は、仕事時間の管理、タイムマネジメントです。
2つ目は、仕事の改善、プロセスリエンジニアリングです。
3つ目は、良好な人間関係の構築、チームコミュニケーションです。
4つ目は、人間育成、コーチングです。
それぞれについて確認していきましょう。
仕事時間の管理=タイムマネジメント
四面展開の第1は、仕事時間の管理、タイムマネジメントに関することです。
仕事の管理の本質は大きく分けると2つあります。
1つは、仕事管理の本質は、「仕事時間の管理」であることです。
タイムマネジメントは、人件費(コスト)の管理であり、自己責任の管理です。
そして、提供できる唯一の資源である時間を活用することとも言え、全ての基本であり土台となるマネジメントとなります。
仕事時間は24時間ではなく、限定(制限)されている
もう1つは、仕事時間は24時間ではなく、限定(制限)されているということです。
仕事時間は、組織によって決まっており、規則があります。
そして、残業時間も制限があるように、有限です。
従って、失えば取り戻すことが不可能です。
仕事は、制限され限定されている「労働時間」の中で行われます。
好き放題の時間を投入することは許されないのです。
以上のことを仕事時間の管理の基本として覚えておきましょう。
仕事の改善=プロセスリエンジニアリング
四面展開の第2は、仕事の改善、プロセスリエンジニアリングに関することです。
ここでも2つの基本になる考え方があります。
1つは、仕事の改善という本質は、「仕事の品質」の管理になるということです。
プロセスマネジメントは、工程管理とも呼び、効率性の向上を前提とします。
そして、プロセスリエンジニアリングにより、改善や改革による生産性アップを目指していきます。
当然ながら、管理者ばかりではなく全員の取り組みが必要になっています。
仕事は全てが連鎖している
もう1つは、仕事は全てが連鎖しており「チェーン」の一部になっていることです。
単独なものはなく、必ず全ての仕事は繋がっています。
組織には、バリューチェーン(価値連鎖)があり、分業しながら生産性の改善を指向します。
そのため、組織は、連携しながら全体の品質を作りこむことが必要です。
それ故、チェーン状の中での停滞や非効率は全体的な品質低下を招くことになります。
改善や改革による品質の向上や生産性の向上を図ることは、仕事の本質です。
このことを認識し、カイゼンを業務の中心におくことが大切です。
良好な人間関係の構築=チームコミュニケーション
四面展開の第3は、良好な人間関係の構築、チームコミュニケーションに関することです。
チームコミュニケーションにおいては、縦・横・斜め・自チームという4つの切り口があります。
縦の組織連携とは、上司・部下・部下の部下という上下のコミュニケーションのことです。
横の組織連携とは、同じ部署における管理者同士の横並びのコミュニケーションのことです。
斜めの組織連携とは、他部署のメンバーに対するコミュニケーションのことです。
そして、最後の赤い部分、自チームの組織連携とは、同じチームにおけるメンバー同士のコミュニケーションのことです。
これら4つのチームコミュニケーションが、うまく連携を取れていることが、情報伝達の重要なポイントになります。
どこかがギクシャクしてしまうと、たちまち組織全体としての仕事の品質が低下してしまうのです。
人間育成=コーチング
四面展開の第4は、人間育成、コーチングに関することです。
人を育てるというポイントは、コーチングにあると言っても過言ではありません。
コーチングにもいくつか種類があります。
1つは、マネジメントコーチング、管理者が管理者をコーチングするやり方です。
もう1つは、部下育成コーチング、管理者が部下(メンバー)をコーチングするやり方です。
それ以外にも、コーチングの人数に関する2つの区分もあります。
1つは、ピアコーチングと呼ばれるもので、直属関係の1対1の指導育成が基本になるやり方です。
もう1つは、グループコーチングと呼ばれるもので、管理者1人が複数の部下を一度にコーチングするやり方です。
どのコーチングにおいても、コーチングを行なう管理者になる人物は、しっかりとコーチングスキルを身に着けた上で行なわなければいけません。
間違ったやり方でコーチングをしてしまうと、逆効果になるため注意が必要です。
仕事管理・改善のポイント
仕事とは何か?定義する
それでは次に、仕事管理・改善のポイントについて確認していきましょう。
仕事を管理し改善していくにあたり、まずは仕事とは何かを定義してみます。
仕事の全体像は、基本的な作業と、論理的かつ効率的な順番によって構成されています。
ここで重要なのは、作業と仕事を区別することです。
作業とは、生産プロセスに配置して並べられた、分業の中身です。
では、仕事とは何でしょうか。仕事とは、その作業と作業のなかにおける、3つの取り組みのことを指します。
1つ目は、予期せざることを感知することです。
定型作業の中で生じてくる、予期せざることを察知して対処することが仕事になります。
2つ目は、プロセスの調整を検討することです。
作業プロセスの調整を図り、バランスよく作業が配置されているのか、その順番は正しいのか、やり方はよいのか検討することが仕事となります。
3つ目は、必要水準を維持して管理することです。
求められる作業の達成水準をしっかりと維持していくことが仕事となります。
重要なことは、仕事と作業は本質的には異なるということです。
作業は「定型的」だが、仕事は「創造的」になるということを認識する。これが非常に大切なポイントとなります。
仕事の管理の目的は、「効率性の追求」にあり!
ここで、ドラッカー博士の言葉を引用します。
「成果を上げるものは、仕事からスタートしない。時間からスタートする。
計画からもスタートしない。何に時間を取られているかを明らかにすることからスタートする。」
時間を取られている仕事は、本当に重要な仕事なのか。成果を上げる人は、まずはこれをしっかりと考えることから始めているということです。
仕事の管理の目的は、「効率性の追求」にあることを覚えておきましょう。
非生産的な欲求を退け、「時間をまとめて無駄をなくす」
もう1つ、ドラッカー博士の言葉があります。
「時間を管理すべく、自分の時間を奪おうとする非生産的な欲求を退ける。
そして、最後にその結果得られた時間を大きくまとめる。」
我々は、つい放っておくと非生産的な欲求に時間の大半を奪われてしまうことになりかねません。
非生産的な欲求を退け、「時間をまとめて無駄をなくす」、という切り口が重要なのです。
ムリムダムラの排除
そしてもちろん、ムリムダムラの排除も欠かせません。
ムリムダムラは、放置すると次第に当たり前になってしまいます。
- 最初は「例外的な無理」だったとしても、次第に日常的なものにすり替えられていきます。
- 無理が続くと、余裕を作ろうとして、「不要なバッファ」が増加してしまいます。
- 気分のムラが、「仕事の品質」に影響を及ぼしてしまいます。
仕事においては、意識的に「ムリムダムラを排除」する姿勢を取るようにしなければならないのです。
体系的な廃棄を行うことが肝心
普段仕事をしていると、単に昨日まで継続してきたからという理由で、「今日もそれを行う」という選択をしがちです。
今まで行なってきたからには、何らかの必要性があるのかもしれません。
ただし、昔は必要だったことでも、今考えてみると不要なことを続けてしまっていることも多々あります。
従って、本当に必要か定期的に判断し、体系的な廃棄を行うことが肝心です。
なお、体系的な廃棄とは、P・F・ドラッカー博士が提供した概念です。
イノベーティブな活動には、「保守(部分的な改善)」と「廃棄(全面的な停止)」の両方が伴います。
かつて上手く行っていたことやプロセスも、時間(時期)や環境が変化すれば機能や成果が低下します。
ある時期には必要だったことやプロセスが、現在は足を引っ張るお荷物になることがあります。
体系的な廃棄とは、一定期間を見て現状成果につながらないプロセス等を止めることを指しています。
ムリムダムラを排除し仕事の生産性を上げる4つの切り口
ムリムダムラを排除し仕事の生産性を上げる4つの切り口を紹介しましょう。
- 分析する = まずは仕事に必要な作業手順と条件を知ることが大切です。
- 総合する = 仕事の作業を集めて「プロセス」に編成します。
- 管理する = 仕事の方向付けや基準について管理手段を決めます。
- 道具を使う= 仕事の生産性を測定するツールを選びます。道具、ツールとは、判断基準や測定の物差しのことです。
ムリムダムラの排除には、これらの4つの仕掛けを、具体的に実践することが必要不可欠となります。
体系的な破棄を行わないと・・・
体系的な破棄を行わないと、組織は次から次へと仕事に追われてしまいます。
本来の優先順位を考えると、今行っていてはならないことに資源を浪費することになります。
そのような状態になると、特に有能な人材が不足してしまうという事態に陥ります。
多くの業務に対して、常に古くなったやり方を捨て、新しいものに変えていく必要性をドラッカー博士は説いているのです。
エクササイズ!
それではここで、エクササイズを行ないましょう。
ここでの取り組みは、体系的な廃棄とはどういうことかを考えてみます。
この図で表しているように、作業の2番目の工程を分析すると、無駄なことが多々あることが分かってきました。
さぁ、果たしてこのプロセスをどうするべきなのでしょうか?
どのような視点でこのプロセスに対して体系的な廃棄を進めていくのか、実際にあなたの考えをメモに取って整理してみましょう。
回答例
さて、回答例です。ドラッカー博士は以下の質問を常に行なうことを推奨しています。
①最近(この1年間)で「あえて止めたこと・プロセスはあるか?」
②現在「止めても支障のないこと・プロセスは何か?」
③その支障のないことを「一度短期間止めることはできないか?」
④③の停止の後、「トラブルや不具合があるのか?」
⑤③の停止後に「再度開始(停止を止めて再開)すべきと思えるか?」
⑥再度開始しなければならない場合以外は、そのまま廃棄することはできないのか?
体系的な廃棄の判断基準は、成果を上げているのかどうかです。
導入されたことに対する実績成果(現在) は、掲げた想定成果(過去)と比較した時、ズレや見込み違いが発生してはいないかを確認しなければなりません。
成果を上げられないものを遺していることは、むしろ社会に対する無責任になることを意識し、体系的な廃棄を定期的に実施していくことが必要不可欠となります。
組織管理のポイント
人と労働のマネジメントには、人間行動の理解が不可欠
それでは早速、「組織管理のポイント」について確認をしていきます。
まずは、人間管理について少し考えて見ましょう。
人と労働のマネジメントは、人間行動の理解が不可欠です。
俗に「X理論」と「Y理論」と呼ばれているものがありますが、ご存知ですか?
「X理論」とは、人間はそもそもサボるので、「強制」や「監視」がいるという考え方です。
鞭(むち)や飴(あめ)のマネジメントであり、心理的な支配を行うことになります。
一方、「Y理論」はその全く逆で、人間は欲求を持ち、仕事を通じて自己実現と責任を欲するという考え方です。
人間性尊重の姿勢でマネジメントを行ない、尊敬を基礎に置く関わり方になります。
日本における日本的経営は人間尊重の経営と言われています。
次に掲げる5つの項目が、日本的経営の特徴になります。
日本における「日本的経営 = 人間尊重経営」の特徴
- 全員が退職するまで社員教育や研鑽を日常的に行っている。
- 終身雇用制度=ひとたび雇われれば職場が保証されている。
- 福利厚生が重視されている。
- 企業内労働組合が主である。
- ジョブローテーションしながら、出世していく。
この日本的経営は良い側面も多く、過去に日本企業が成長してきた土台となっている仕組みでもありますね。
チームワークとコミュニケーション
それでは次に、組織管理において欠かせない、チームワークとコミュニケーションについてです。
チームワークは、「仕事の血液」とも言われます。
- 全ての仕事は、チームワークで行ないます。単独の仕事などありえません。
- チームワークの本質は、「情報伝達」にあります。
- 情報伝達=コミュニケーションは、発信と受信の連動にあります。
- 発信者は、受信したかを確かめる義務を負います。
- 受信者は、発信者に受信した旨をフィードバックする義務があります。
コミュニケーションは、協働意欲がないと成り立たない!
コミュニケーションは、協働意欲がないと成り立ちません。
- コミュニケーションは、気持ちのやり取りです。
- 協働意欲=共に支援しながら働く意欲、つまり他者を尊重する姿勢が必要です。
- メールや文書のやりっ放しは、コミュニケーションとは言えません。
- 究極のコミュニケーションとは、「以心伝心」になっていることです。
- 日常的に互いを気遣い配慮していると、何を欲しているかが分かるようになる。これが、チームワークとコミュニケーションのゴールイメージです。
リーダーシップと方針展開
さてそれでは、組織管理に欠かせない「リーダーシップと方針展開」についても確認しておきましょう。
経営者の方針である経営理念(経営哲学)や経営戦略(経営戦術)は組織の中にどのように伝わっていくのでしょうか。
上の三角形は、経営リーダーシップと言われます。
経営ビジョン、経営方針が、各部門長に伝わってきます。
下の構造は、課長から課員への方針展開であり、部署のリーダーシップとなります。
これは、方針浸透・目標の連鎖という形で、上位から下位に伝わっていくことになります。
エクササイズ!
さて、ここでエクササイズです。
リーダーシップには、ボス型、リード型、サーバント型の3種類があります。
このそれぞれの図の中で、どの人がリーダーでしょうか。
そして、そのリーダーは、どういうリーダーシップを発揮しているでしょうか。
リーダーに印をつけて、その横にリーダーシップの発揮の仕方の特徴を簡潔に整理してみましょう。
解答例
さぁ書けましたか?解答例です。
まず、ボス型のリーダーシップの場合、リーダーは一番上の人です。
上意下達の指示命令となり、管理統制は非常に厳しいのが特徴です。
部下は管理者が言うことをするだけになり、あらゆる判断が上の一人に集中します。
次に、リード型のリーダーシップの場合、リーダーは一番上の人になります。
ボス型とは異なり、部下と丸が重なっているのが特徴です。
この場合、率先垂範しながら部下との連携で物事を進めて行くことになります。
部下は管理者とコミュニケーションを密に取りながら、臨機応変な対応が可能です。
リードする側が部下の状況を常に把握する必要があり、部下に任せるべきところは任せ、判断業務は管理者が全責任を持って担うことが特徴です。
最後に、サーバント型のリーダーシップの場合、リーダーは一番下の人になります。
目的を伝えればあとは部下に全権を託して、管理者はサーバントのようにその部下の遂行を支援します。
最近流行の姿勢ではあるものの、現実には部下丸投げになりやすく、リーダーシップを発揮しずらいことも特徴です。
この中で、リード型のリーダーシップが日本の組織風土的に一番良いスタイルと言われています。
事例研究
反面教師的な存在から学ぶ
それでは次に、事例研究に入りましょう。
時間貧乏な人、ムリムラムダな人、ボスマネジメント、サーバントリーダーという4つの反面教師的な存在から、自分が目指すべき人物像について学んでいきます。
時間貧乏な人
まずは、時間貧乏な人についてです。
時間貧乏とは、自分で時間をコントロールできない人のことを指します。
- 常に緊急事態に追い立てられている。
- 人に仕事を任せられない。任せてもすぐに引き取ってしまう。
- 自分の仕事の優先順位を付けられない。手あたり次第にやり始める。
- 劣後順位を付けることをしたことがない。止めることを決められない。
皆さん自身はどうですか?
当てはまる項目が、一個でもあったとするならば、あなたも時間貧乏な人かもしれません。
時間貧乏な人にならないために
時間貧乏な人にならないためには、時間をコントロールできるようにならなければいけません。
時間のコントロールとは、「やらないことを決める」ことです。
- どうしても自分がやるべきことに集中する。
- 自分以外の人に任せることを決める。
- 一度任せたら、途中で引き取らない。任せきれずに時間貧乏にならない。
- 自分はやらないと決めたことは、覚悟を決めてやらない。
これらを意識して時間貧乏な人にならないようにしていきましょう。
ムリムラムダな人とは?
次に、ムリムラムダな人です。
無理を承知で力任せに仕事をしている人は、仕事の量はこなせるが成果は出ません。
- 無理は続かない。どこかで収支を合わせる場面が来る。
- 徹夜して仕事をすると、翌日は仕事にならない。
- ハードワークし続けて、健康を害しては何にもならない。
無駄を承知で過剰なほど手を掛けすぎる人は・・・
そして、無駄を承知で過剰なほど手を掛けすぎる人は、仕事の出来栄えは自己満足にもなり得ます。
- 心配性の人は、細かいディテールにこだわり過ぎる。
- 不安神経症的な人は、予備や余分を作りすぎる。
- 無駄だと内々思っていても、日頃の習慣から止められない。
ムラがあって集中と弛緩が自分でコントロールできない人は・・・
更に、ムラがあって集中と弛緩が自分でコントロールできない人は、仕事の品質が定まりません。
- 気分次第で仕事のスピードが違っている。
- 気分が向かないと、そもそも仕事をしようとしない。
- 気分が向くまで時間が掛かり、期限ギリギリでバタバタすることも多い。
現実の職場には、いま挙げた3つのムリムラムダな仕事の仕方に当てはまる人を多々見受けることがあります。
あなたは大丈夫ですか?これらのムリムラムダが多い、いわゆる仕事ができない人にならないようにしたいですよね。
ボスマネジメントな人とは?
次は、ボスマネジメントです。
ボスマネジメントは、他者を支配したがる人のことを指します。
飴と鞭で人間の心を金縛りにし、人を自分の言いなりにして初めて安心を得るようなタイプです。
人間は結局、外的なコントロールには従いません。
結果として部下は、面従腹背という姿勢になってしまいます。
口先ではYESと言い、腹の中では、「やるものか」と決意してしまうのです。
そもそも強制支配をするボスマネジメントの頭の中には、人間不信や臆病、傲慢不遜な姿勢があると言われています。
サーバントリーダーな人とは?
最後に、サーバントリーダーです。
サーバントリーダーは、他者を支援します。
最新理論としては、確かに理解できますが、理屈は理解できても、実際には実行は極めて困難であると言われています。
表面的な関わりでは、部下にすぐに見抜かれてしまいます。
サーバントよりは、「パートナー」の方が良いというのが、現代の考え方です。
あなたは心当たりがありませんか?
以上4つの反面教師、あなたは心当たりがありませんか?
もし当てはまる部分があると感じたら、今日から早速自分の意識と行動を変えてみることが、よいマネージャーへの第一歩ですね。
初級管理職のセルフマネジメントまとめ
以上で学んだことをまとめてみましょう。
セルフマネジメントのポイントとは?
- ドラッカー博士の言う「マネジメント」の2つの役割とは、「自らの組織を通して社会に貢献すること」「課題すべてを今日と明日のバランスのもとに管理すること」
- 日本での間違ったマネジメントとして、「マイクロマネジメント」「結果管理マネジメント」「放置放任・ノーマネジメント」「集団責任・五人組マネジメント」「目標がそもそも「ない」」等が挙げられる
- 職場にはびこる「ノーマネジメント」現象に対処するには、セルフマネジメントを徹底することが必要
- マネジメントの四面展開とは、「仕事時間の管理、タイムマネジメント」「仕事の改善、プロセスリエンジニアリング」「良好な人間関係の構築、チームコミュニケーション」「人間育成、コーチング」
- 作業とは、生産プロセスに配置して並べられた、分業の中身のこと。仕事とは、その作業と作業のなかにおける、3つの取り組みのこと
- X理論とは、人間はそもそもサボるので「強制」や「監視」がいるという考え方。鞭(むち)や飴(あめ)のマネジメントであり、心理的な支配を行うやり方
- Y理論はその全く逆で、人間は欲求を持ち、仕事を通じて自己実現と責任を欲するという考え方。人間性尊重の姿勢でマネジメントを行ない、尊敬を基礎に置く関わり方
- 聞き間違いや認識違いをしない為に必要な事は、命令・指示を復唱すること。認識が間違っていても、訂正できるので事前にミスを防ぐことができる
いかがでしたか?初級管理職のセルフマネジメントのポイントはイメージできましたか?
初級管理職として、マネジメントの一員に加わるという立場になったら、ドラッカーの言葉を思い出して、正しいセルフマネジメントを行っていきましょう!
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