グラフの種類と特徴(円・棒・折れ線グラフ、散布図、ヒストグラム、帯グラフ、レーダーチャート)
目次
グラフとは
視覚的に全体の姿を分かるようにする「グラフ」
グラフとは、2つ以上のデータの相対的関係を表す図のことで、視覚的に全体の姿を分かるようにするための手法です。具体的には、数値だけでは読みとれない情報を、視覚的に理解しやすくすることを目的に作成された図表、図形のことを指します。
グラフは基本的に、点、線、面の3要素を基本に作成されます。代表的なものとして、円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフ、散布図、ヒストグラム、帯グラフ、レーダーチャートがあります。
本ページでは、グラフの種類と特徴、活用イメージについて解説しています。
色々な種類のグラフ
一言でグラフと言っても、実際には色々な種類のグラフがあります。
例えば、円グラフは、全体において各項目がどのくらいの比率なのかを確認する時に使います。
棒グラフは、各項目同士がどのくらいの差があるのかを確認する時に使います。
折れ線グラフは、日を追うごとの推移等、時系列のデータの推移を確認する時に使います。
帯グラフ、レーダーチャートは、前年比でどのように割合が変化したかを確認する時等に使います。
目的に合わせて最適なグラフの種類を選定しよう!
グラフ作成における大前提として、データを集めただけでは、単なる数字の集まりに過ぎないことを覚えておかなければいけません。
「〇〇について、全体に占める割合を知りたい!」「〇〇について、日々の推移を確認したい!」グラフを作る際には、まずはそこからスタートしなければいけません。
何を可視化したいのかをしっかりと考えた上で、目的に合わせて最適なグラフの種類を選定していくことが大切です。
グラフの種類と特徴
代表的なグラフ
代表的なグラフは7種類あります。
1つ目は、円グラフです。円グラフは、全体の中での構成比を見る時に使います。
2つ目は、棒グラフです。棒グラフは、棒の高さで、大小を比較する時に使います。
3つ目は、折れ線グラフです。折れ線グラフは、量が増加か減少か、変化の傾向を見る時に使います。
4つ目は、散布図です。散布図は、2種類のデータの相関を見る時に使います。
5つ目は、ヒストグラムです。ヒストグラムは、データのバラツキの大きさを見る時に使います。
6つ目は、帯グラフです。帯グラフは、構成比の変化を見る時に使います。
7つ目は、レーダーチャートです。レーダーチャートは、複数の指標をまとめて見る時に使います。
グラフには、得意・不得意がある
そして、グラフには、得意・不得意があります。
どのグラフを使えば伝えたいことを的確に伝えられるのかを習得することが本講義の狙いです。
代表的なグラフの特徴
それでは実際に、代表的なグラフである円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフについて確認していきましょう。
円グラフとは
円グラフは、対象データの合計が100%になるもので、100%の中の構成比を表したい時に活用します。
基本は大きい順から時計回りに並べます。
割合が少ないものは、その他としてまとめます。ただし、その他にまとめたものが大き過ぎないように注意しましょう。
対象データにもよりますが、その他は30~40%以下が目安です。
なお、アンケート調査のように、「そう思う」、「どちらかと言えばそう思う」、「どちらかと言えばそう思わない」、「そう思わない」、というようなデータを円グラフに描く際は、大きい順でなくても構いません。
あくまで見る人へ伝えたいポイントが伝わるような並べ方を意識するようにしましょう。
円グラフの注意事項
円グラフの注意事項としては、使用するデータは、必ず合計で100%となるようにすることです。
例えば、この円グラフを見てください。会社の年齢別の人員構成を円グラフにしたものです。
一見間違いはない様に見えますが、実は「その他」が抜けてしまっています。
その他が抜けた状態で円グラフを描いてしまうと、第3者がパッと見た時に、「そうか20代は会社の中の27%を占めているのか」、という誤った認識をしてしまいかねません。
しかし、実際にその他を入れてグラフを描くと、23%となり、4%も変わってしまっていたことが分かります。
実務においては、例えば、品質不良の件数等の「その他」が変動しやすいものに対しては、その影響は大きく現れ、誤った判断に繋がってしまうことも起こり得ます。
円グラフを描く時は、データの範囲をしっかりと確認してから描写するようにしましょう。
棒グラフとは
棒グラフは、縦軸にデータ量、横軸に比較したいものを並べ、棒の高さでデータの大小を表したい時に活用します。
特別、作り方に決まりはないものの、見る側が理解しやすいように、「大きい順に並べる」、「時系列で並べる」 等の工夫をすることがポイントです。
棒グラフには色々な種類があります。基本形としては、縦棒グラフと横棒グラフです。積上げ棒グラフやパレート図等は発展形の棒グラフですね。
積上げ棒グラフとは
これが積上げ棒グラフです。
事例として、第1次産業、第2次産業、第3次産業における就業者数が、時系列でどのように変化してきたのかを表したグラフとなります。
このグラフでは、時が進む毎に就業者数全体が増加してきているのと共に、第1次産業が減少し、第3次産業が増加してきたのを見ることができます。
このように、積上げ棒グラフは、1本の棒に、複数のデータを積み上げて表したものであり、
全体のデータの大きさだけでなく、その中身の各項目のデータの大きさも合わせて見たい時に有効なグラフとなります。
折れ線グラフとは
折れ線グラフは、横軸に年月や時間、縦軸にデータ量を取り、それぞれのプロットを折れ線で結んだグラフとなります。
折れ線が右肩上がりであれば増加、右肩下がりであれば減少であり、データの増減を見るのに効果的です。
注意事項がいくつかあります。
まずは、あまりに複数のデータを折れ線で並べると非常に見にくくなるので注意しましょう。
そして、縦軸のデータの範囲にも注意が必要です。
また、データの大きさが全然違うものを同じ縦軸で書いてはいけません。
それぞれについて確認していきましょう。
折れ線グラフの注意事項①
この折れ線グラフは、複数のデータを並べて描いた例になります。
このように、あまりに複数のデータを折れ線で並べると非常に見にくくなってしまいます。
これでは問題点が見えないだけでなく、何か伝えたいことがあっても、うまく伝わらないですね。
こうならないように、見せたいことを絞ることも必要です。
例えば、円グラフで占有率が上位のものだけをピックアップし、それらのものだけに対して折れ線グラフで推移を確認すると、変化が見えやすくなります。
この場合は、B,I,Jは2015年に低下し、2016年には再度増加したものの、Lだけは2016年に大きく減少してしまったことが分かります。
折れ線グラフの注意事項②
この折れ線グラフは、縦軸を広い範囲にしすぎてしまった例になります。
これでは、データの上昇・下降傾向を見たくても、変化が見えなくなってしまいます。
そうならないように、変化が見やすい範囲で縦軸を決めることが基本です。
この場合だと、ほとんど変化がないように見えていた出荷数が、実はA製品、B製品は増加しているのに対して、C製品は2016年になり減少してしまったことが見えてきます。
折れ線グラフの注意事項③
この折れ線グラフは、データの数字の大きさが全然違うものを同じ縦軸で描いてしまった例になります。
これでは、小さい方のデータの変化が見えなくなってしまいます。
こうならないように、必要に応じて第2軸を活用してグラフをつくることが必要です。
この場合は、A製品を第2軸にして表示すると、A製品だけでなく、B,C製品も変化があったことを確認することができます。
折れ線グラフと棒グラフどちらを使う?
ではここで、問題です。
ある人のテストの成績があります。この成績をグラフで表現する際には、折れ線グラフと棒グラフ、どちらが正しいでしょうか?
正解は、こうなります。そう、折れ線ではなく、棒グラフが正解です。
なぜだと思いますか?
折れ線グラフの注意事項④
実は、折れ線グラフにはもう1つ注意事項があります。
連続しているデータでなければ、折れ線グラフは適していないのです。
複数の独立したデータは、棒グラフ等を使用しなければいけません。
先程のテストの点数は、国語、数学が連続しているわけではないので、折れ線で描くのは間違いなのです。
連続しているデータというのは、例えば国語の平均点数の推移といったものが挙げられます。
時系列で連続しているデータを見る時は、点と点が繋がっている折れ線グラフの方が、直感的に理解しやすいのです。
一方で、個人別の国語の点数のように、独立したデータを見る時は、点で繋がっていると逆に理解しにくくなります。
従って、この場合は、このように棒グラフで描くほうが理解しやすいのです。
折れ線との組合せグラフ
棒グラフと折れ線グラフの組合せグラフについても確認しましょう。
この事例では、ある会社の期末の在庫金額が、どの製品がどれだけ占めているかを表しています。縦棒は、左軸で各製品の在庫金額を多い順に並べ、折れ線は、右軸で累積比率となります。
一般的には、累積比率が70%程度までの製品をAランクと定め、重点管理する等の使い方をします。
このグラフは、パレート図と呼ばれ、上位のデータが全体の比率の何%を占めているかを、一目で分かるようにしたものです。
実務では、重点管理対象を選定する際によく活用しますので、覚えておきましょう。
※パレート図について、下記のページで詳細を解説しています。
[reg-bnr]パレート図とは? パレート図とは、「全体の中で大きな影響を占めるものが何であるかを明確にし、重要な問題を特定するための手法」です。パレート図は、QC7つ道具の1つですが、QCだけではなく、改善活動のあらゆる場面で有効...
円グラフ・棒グラフ・折れ線グラフの使い分けの判断方法
それでは、円グラフ,棒グラフ,折れ線グラフの使い分けの判断方法を確認します。
まずは、データの合計が100%になるかどうかを確認します。100%になる場合は、円グラフを活用できます。
データが100%にならない場合は、データが時系列かどうか(連続データかどうか)を確認します。データが時系列の場合は、折れ線グラフを活用できます。
データが時系列にならない場合は、棒グラフを活用しましょう。
これが基本の判断方法です。迷ったらこれに当てはめて間違いを回避しましょう。
散布図
2つの量に関係があるかどうかをみるために有効
散布図とは、縦軸と横軸に、量や大きさを取り、データを当てはまる所にプロットをしたグラフです。
2つの量に関係があるかどうか (相関の有無)をみるために有効です。
QC7つ道具のうちの1つですね。なお、散布図はあくまで相関を見るためのもので、因果関係を示すためのものではないことに注意しましょう。
特に、疑似相関、外挿(がいそう)には要注意です。
※散布図に関しては、下記のページで詳細を解説しています。
[reg-bnr]散布図とは 相関の有無を確認する散布図 散布図とは、縦軸と横軸に、量や大きさを取り、データを当てはまる所にプロットをしたグラフのことです。プロットとは、点を描くことを指します。 2つの変数に関係があるかど...
ヒストグラム
データのバラツキ状態を視覚的に見るために有効
ヒストグラムとは、測定データが存在する範囲をいくつかの区間に分けて積上げたグラフです。
データのバラツキ状態がどの程度か視覚的に見るために有効となります。
これがヒストグラムの事例です。あるクラスの人の身長を5cmごとに区分けし、各区間で何名の生徒がいるかを表したものです。
傾向やバラツキ状態が分かるように、どのような区間分けにするかが重要となります。
山が鋭く高い場合はバラツキが少なく、山がなだらかで低い場合はバラツキが大きい
また、ヒストグラムで描いたデータが、山が鋭く高い場合は、そのデータはバラツキが少なく、山がなだらかで低い場合は、バラツキが大きいことになります。なお、ヒストグラムのポイントは、次の通りです。
・データのバラツキの全体像を掴むこと
・分布の形を確認すること(分布の形としては、離れ小島型、二山形、絶壁型等)
・規格値と比較すること
・工程能力指数から工程の状態を数値化すること
※ヒストグラムや標準偏差、工程能力指数に関しては、下記のページで詳細を解説しています。
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帯グラフとは
帯グラフは、長さを揃えた棒を並べ、それぞれの棒の中の構成比を表すグラフです。
複数のデータの構成比が、どのように変化しているか見たい時等に使うと効果的です。
円グラフと目的が似ていますが、帯グラフでは、円グラフでは出来ない 「時系列での推移」を見たい時等に特に有効となります。
この帯グラフを見てください。
これは、昭和30年から平成17年までの、産業の構成比です。
第1次産業が減少していき、第3次産業が拡大していった様子が見て取れます。
レーダーチャートとは
レーダーチャートは、複数の指標を1つのグラフに表示することにより、全体の傾向を掴むためのグラフです。
レーダーチャートの形状で、全体の大きさ、指標毎の強みや弱みが一目で分かるのが特徴です。
注意点としては、大きい程「良く」なるようなデータにすることです。
例えば、「100メートル走のタイム」をそのまま指標にしてはいけません。
なぜならば、100メートル走のタイムは、早くなれば早くなるほど、小さくなるからです。
レーダーチャートで表す場合は、これを大きい程良くなる指標にしなければいけません。
例えば、秒速に直したり、大きい方が高得点になる点数付け等を行ない、変換するようにしましょう。
レーダーチャートの活用例
レーダーチャートは、5S活動においても、よく活用されます。
5S活動においては、初期の段階では、自分達の立ち位置を知るために、5Sレベルの評価を行ないます。その結果をレーダーチャートを使って表現するのです。
レーダーチャートを見ながら、重点的に実施する内容とその日程を決めていきます。
そして、決めた内容を日程を守り実行し、定期的なレベル評価を行ないます。
ここでも、始めに評価したレーダーチャートに対して、改善状況を確認し、目標に足りていない項目に対して再度検証・検討していきます。
そして、必要に応じて実行内容の変更・追加を実施する、というサイクルを回していきます。
このようにレーダーチャートは、複数の指標に対して、どこが強くてどこが弱いかを見える化するために、とても有効なツールとなります。
グラフ作成においてよくある質問集
まずは、グラフ作成において、よくある質問をまとめましたので、確認していきましょう。
量の大小を表す時には、どのグラフを使えばよいのでしょうか?
この場合、棒グラフを使いましょう。棒の高さで量の大小を表すと、一目で分かりやすいグラフになります。
増えている、減っているといった傾向を表すには、どのグラフを使えばよいのでしょうか?
この場合、折れ線グラフを使いましょう。線の傾きで増減を表すことができ、また長期的な傾向も一目瞭然です。
データのバラツキを表すには、どのグラフを使えばよいのでしょうか?
この場合、ヒストグラムを使いましょう。山の大きさでバラツキが一目で分かるようになります。
割合を表すには、どのグラフを使えばよいのでしょうか?
この場合、円グラフや帯グラフを使いましょう。基本的に、ある瞬間の構成比を見たい場合は円グラフ、更に推移を見たい場合は、帯グラフと覚えるようにしましょう。
2つのデータに相関があるかどうかを表すのは、どのグラフを使えばよいのでしょうか?
この場合、散布図を使いましょう。プロットされた点の傾向を見れば、相関の有無は一目瞭然で確認が可能です。
複数の指標をまとめて表すには、どのグラフを使えばよいのでしょうか?
この場合、レーダーチャートを使いましょう。棒グラフや折れ線グラフでもよいですが、レーダーチャートでは、レーダーの大きさにより長所短所を一目で把握できるのでおススメです。
グラフの種類と特徴まとめ
以上で学んだことをまとめてみましょう。
グラフとは?グラフ作成のポイントとは?
- グラフとは、2つ以上のデータの相対的関係を表す図であり、視覚的に全体の姿を分かるようにするために活用する手法
- グラフには、得意・不得意があります。どのグラフを使えば、伝えたいことを的確に伝えることが出来るのかをしっかりと考え、グラフを選定することが大切
- 代表的なグラフには、円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフ、レーダーチャート等がある
- 円グラフの注意事項は、安易に3D円グラフを使わないことと、全体で100%となる対象データに使用すること。見た目だけにこだわらず、伝えたいことが伝わるような円グラフを作成する
- よく使う発展形の棒グラフは、積上げ棒グラフと、折れ線との組み合わせグラフであるパレート図
- 折れ線グラフは、連続していないデータには使ってはいけない。複数の独立したデータを線で繋ぐと、とても分かりにくくなるので要注意
- 基本的には、データの合計が100%の時は「円グラフ」、データの合計が100%でなくデータが時系列の時は「折れ線グラフ」、データの合計が100%でなくデータが時系列でない時は「棒グラフ」を使う
- 散布図を描く時には、疑似相関、外挿に注意が必要一般常識や自然の現象を大前提とし、常識的な判断を抜かしてしまうことが無いように気を付ける
- ヒストグラムでは、山が低いとバラツキが大きく、一方、山が高い場合はバラツキが小さいことになる
- 円グラフと帯グラフは、使用用途が似ており、合計で100%になるデータの構成比を見たい時に用いる。帯グラフでは、この構成比に加えて、その推移も合わせて見たい時に使うようにする
- 複数の指標をまとめて表すのに最適なグラフは、レーダーチャート。長所短所を知る時に非常に有効なツール
いかがでしたか?グラフの種類や特徴についてイメージを掴めましたか?棒グラフと折れ線グラフの使い分け等、新しい発見があったのではないでしょうか。
実務においては、調査結果のまとめの際にグラフで見える化したり、報告書やプレゼンの際に伝えたいことをグラフで表現したり等、沢山の場面でグラフは使用されます。
グラフを作成する際に大事なことは、問題が正しく見えること、そして相手に的確に伝わることです。
本ページに載せている基本をベースに、グラフ作成のスキルアップを目指していきましょう。きっと、今まで以上に相手に伝わるようになり、仕事がよりスムーズに進むはずです。
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