withコロナ時代の人材教育
目次
世の中どうなってる?withコロナ時代の人材教育
(本記事は、2020年7月13日に掲載されたものです。)
新型コロナウイルス(COVID-19)は、様々な業界に大打撃を与えています。かく言う我々人材教育業界、コンサルティング業界でもかなりの打撃を受け、廃業を選択した方も多いと耳にしています。
特に、対面型の研修は、ほぼ全てが中止または延期になっており、ここ数週間で経済が回り始めたことで研修再開の動きがあったものの、最近の感染者の増加に伴い、またしても延期が続出している状況が続いています。野球に例えると、今現在、新型コロナウイルスが2回表の攻撃を仕掛けている最中と言う感染症専門家の意見もあり、まだまだ先の長い戦いになりそうです。言い方を変えると、研修講師を職としている人は、非常に苦しい期間が続くということになります。
一方、このように色々なことが止まってしまっている環境下でも、企業の人材教育における方向性は少しずつ見えてきています。今回は、人材教育の現場において現在起こっている次の3つのことについて考察してみたいと思います。
① 社内研修の大胆な改廃
② 対面教育時間の削減
③ 教育の内製化
① 社内研修の大胆な改廃
まずは社内研修の大胆な改廃が起きています。
これはもうこの言葉の通りですが、必要性が合理的に説明できないものに関しては例外なく改廃が進められています。研修はそもそも「不要ではないけど不急」と判断される傾向にあるものなので(残念ではありますが…)、当然と言えば当然です。
ただし、よくよく考えてみると、これまで「何となく行っていた」研修は、これを機に大胆に整理されていることになります。むしろ悪いことではないのです。「本当に何が必要なのか」「この環境下でも絶対に行うべきものは何なのか」、これを考える契機になったという事実は、決してマイナスだけとは言えないのではないでしょうか。
まとめ
・「何となく行っていた」研修は、これを機に大胆に整理されている
・新型コロナウイルスは、何が必要かを考える契機になっている
② 対面教育時間の削減
2つ目は、対面での教育時間の削減です。
感染リスク低減と学習時間の柔軟性向上の観点から、具体的には座学(知識学習)部分のeラーニング化が進んでいます。実際に、弊社のeラーニングもこの数カ月でそれまでの1.5倍の企業様にご活用頂くことになりました(ご活用頂いている皆様に心より感謝申し上げます)。それだけeラーニングの活用が進んできているということだと感じています。
なお、Zoom等を使ったWEB研修は、全国各地から様々な受講者が集まるオープン型セミナー等では有効なものの、企業内研修ではあまり積極的には行われていないようです。理由としては、
・結局集合しなければいけないので時間制約が生じてしまうこと
・受講者が異なる場所でパソコンからアクセスを行わなければならないので、パソコンの準備などの都合が付かないこと
等が挙げられます。今まで行ってきた研修をWEBにしただけのやり方は、普及しない可能性が高いと考えられます。
ちなみに、当然ながら人材教育では、座学(知識学習)だけでは片手落ちです。グループワークや、グループディスカッション等と合わせて行っていくことで、より理解度を向上させることができます。この部分は引き続き社外講師が行っているケースが多くなっています。理由としては、
・どのようなワークを行うのか?
・グループディスカッションはどう盛り上げるのか?
等を上手く進められる社内の人材が育っていないことが挙げられます。ワークショップを効果的に回していくためには、講師となる人材が知識を保有していることはもちろんのこと、ファシリテーション力、コーチング力など、場の空気を読みながら適切な問いかけをしたり、呼び水を指して議論を促すようなスキルが必要不可欠なのです。このスキルは訓練されていないとなかなか実践することが難しいものとなります。
まとめると、例えば今まで座学研修とワーク型研修を半日掛けて行っていた場合、
・そのうちの座学(知識学習)部分を全てeラーニングで置き換える(完全に非対面型へ移行)
・ワーク型、グループディスカッション型の研修のみを短時間(2時間程度)で実施する
というパターンが多くなっています。対面で行っていた部分で、置き換えられるものは非対面に置き換える、置き換えられないもののみ時間を短縮し、集合して行うということです。
このようなeラーニング等の活用による対面・集合時間の短縮は、感染対策はもちろんのこと、講師の拘束時間を短縮できコスト削減にも繋がり合理的です。実はこのやり方は、新型コロナウイルスが発生する前から存在していたもので「反転学習」と言います。もともと欧米では、eラーニングを活用した反転学習が広く普及していますが、新型コロナウイルス(COVID-19)を契機に、日本でもいよいよ普及が進んでいる印象です。
最近では、「なぜこれまで全てを集合研修にこだわって行ってきたのかが逆に不思議だ」「もう集合研修を今更行おうという気持ちになれない」等のコメントも耳にするようになりました。全てのものを、全員が同じ時間、同じ場所に集まって一斉に学ぶ、という従来の日本式スタイルが時代に合わなくなってきているのです。
まとめ
・座学(知識学習)部分を全てeラーニングで置き換わっている
・これまでの研修をただWEBで行うだけのやり方は普及しない可能性が高い
・ワーク型、グループディスカッション型の研修は時間短縮して実施されている
・反転学習が普及し始めている
③ 教育の内製化
さて、最後の1つは「教育の内製化」です。
教育の内製化については、中長期的な視点から進めている企業が増えています。内製化は、外部へ支払うコストを中長期的に減らすことが大きな目的となります。ただし、それだけではなく、「個々の理解度に合わせて学習と実践をサポートする形」へ変化していることも内製化の必要性が高まっている要因です。これまでは集合型研修で座学やワークを行ってきたものの、知識を学ぶだけでは意味がない(それだけでは実践できる人材が育たない)と感じている企業が増えているのです。
教育の内製化のためには、教育体系づくりが欠かせません。
誰に何を教育するのか、どうやって理解度を評価するのか、どうやって実践力の水準を評価するのか、誰が指導して評価するのか、この体系をつくり、優先順位をつけて実行していきます。製造業における人材教育体系の作り方に関しては、下記のリンクで解説していますので、ご興味のある方はご一読ください。
[reg-bnr]製造業における教育の実態 はじめに 「将来のために教育に力を入れたいのだが、何から始めてよいのかわからない」 「教育が活性化しない。教育担当者である自分が1人が頑張っているのだが限界がある」 「教育に力を入...
教育の内製化に関しては、「個々の理解度に合わせて学習と実践をサポート」する人の存在が大切です。これまでは、社内講師=レクチャーする人という意味合いが強く、教育資料を作ったり、テストの問題を考えたりする人と考えられてきました。しかし、その流れは今変わっています。「チューター」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。チューターとは、まさに「個々の理解度に合わせて学習と実践をサポート」する人です。
チューターは、知識学習に関しては、eラーニング等のWEBツールを活用することであまり時間を掛けないようにします。一方で、個々人の理解をサポートし、知識を使った実践を進める上での考え方・切り口・アイディア等をサポートにはしっかりと時間を使っていくのです。ただの研修講師ではなく、チューターのような存在を重視していくことで、「知識はあるけど実践できない」頭でっかちな人材ではなく、「実践で成果を出せる」人材を育てることに注力をしていきます。そして、そういった人材が育つことこそが、講師依存、コンサルタント依存の体制から脱却していくことにも繋がるのです。
まとめると、教育の内製化においては、「人材教育体系の構築」と「チューター等、学習と実践をサポートする人の育成」が少しずつ進んでいるということです。
まとめ
・個々の理解度に合わせて学習と実践をサポートする形が重要になっている
・内製化のためには、人材教育体系づくりが必要である
・講師は「レクチャーする人」ではなく、チューターのような「サポートする人」へ変わってきている
・実践で成果を出せる人材を育てることが求められている
最後に
これから新型コロナウイルス(COVID-19)がどうなるのか、経済がどうなるのか、それは誰にも分かりません。
しかし、こと教育環境に関しては、全員が集合して一斉に教育を受けるという従来の日本式のやり方からの脱却が間違いなく進んでいます。講師・専門家の間では、「WEBでは真剣に学べない、緊張感が不足してしまう」等の意見も多々出ています。ただし、それでもWEB化は間違いなく進みます。変化を否定しては未来がありません。「同じ内容を一度に全員に」というやり方は間違いなく淘汰されていきます。
IT・WEBをいかに使いこなせたかが大きな差を生む、そんな時代にいよいよ突入しました。その時代はまだ始まったばかり。ただし、きっとものすごいスピードで進んでいきます。その環境変化に対応するために、今できることは何なのか、その課題にしっかりと向き合えた企業だけがきっと、数年後に優秀な人材が育ち、会社を大きく成長させるエンジンになっているはずです。
オンラインを活用して実践型の研修を行おう!
(本記事は、2021年1月18日に掲載されたものです。)
昨年12月から再び猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)。
2度目の緊急事態宣言の発令により、各方面に多大な影響を与えています。
現場における改善活動や研修においても、例に漏れず休止や延期が相次いでいます。
今回はいつまで自粛が続くのか、すぐに終わるのか、ダラダラと長く続くのか、結果は誰にも分かりません。きっといつかは落ち着くことは間違いないのですが、状況をシビアに考えると、感染が増加し行動が制限される状況が今後も度々発生することが予想されます。
そんな環境下で、企業の改善活動や研修の中期的な対応をどうするのか、決断の時期が迫っています。
本記事では、オンラインの「良いところ」を活かし、外部講師を活用した実践研修を行う方法について紹介しています。
例年通りに教育ができない・・・これからどうする?
昨年来、「例年通りの教育ができなかった」、「研修が実施できなかった」というご相談をたくさん頂戴してきました。
特に最近では、
・今後も当面集合教育は出来ないので、オンラインを主とした進め方を検討したい
・とは言えオンラインだけだと効果に疑問があるんだがどうすればよいか
・オンラインでも実践も含めた研修を行うことができないのか
といったご相談がたくさん寄せられています。
このようなご相談を頂く背景としては、「半年前の時点では新型コロナは来年には収束するという期待を持っていた」ものの、「どうやらまだしばらくは大きく環境が改善される可能性が低い」と認識する企業が増えてきていることにあるようです。
オンライン研修は対面型研修より本当にデメリットが多い?
1回目の緊急事態宣言が発令されて以降、オンライン学習は一気に普及しました。
・集合研修の代わりに、ZoomやTeamsを使ったオンライン研修を行う
・eラーニングを活用した個人学習を行う
といった対応は多くの企業で当たり前になりつつあります。
しかし、どちらも有効な手段ではあるものの、「集合研修の代わりにはならないな」「物足りないな」と感じている人も多いようです。理由を伺うと、ZoomやTeamsを使ったオンライン研修では「真剣に聞かない人が出てしまう」「緊張感が不足してしまう人がいる」という意見が多くを占めているようです。
しかし、本当にそうでしょうか?
この議論は、「リモートワークはサボる人がいる」という議論と同じ部類のものであるようにも思います。「リモートワークになるとサボる人がいる」のではなく、普段会社で仕事をしているフリをしている人が、「リモートワークになるとそれがバレる」のです。
対面で行う研修では、講師が目の前にいるので、集中しているフリをしたり理解できているフリをしますが、心の中では「早く終わらないかなぁ」と思って別のことを考えている人もいます。オンライン研修だと「油断するタイミングがたくさんある」ので、それはすぐに伝わってしまうのです。
従って、我々は「オンライン vs 対面」ではなく、研修の中身の設計自体の問題だと捉えています。研修の中身をしっかりと設計し、コロナ禍の環境を踏まえて「オンライン」というツールを最大限活用することが大切だと考えています。
オンラインを主とした実践研修の進め方
企業の研修において求められることは、「実践で使える力を向上させる」ことです。
これを満足し、なお且つ可能な限りオンラインツールを活用するには、どのように進めたらよいのでしょうか?
弊社でも昨年来、オンラインを主とした研修に関して、様々な試行錯誤を行って参りました。試行錯誤の結果、下記のような進め方が一番実現性・有効性が高いという結論に至りました。
- 知識学習・座学に関してはeラーニングで個別学習する(ある意味、効率化や柔軟性を重視すると割り切る)
- 個別学習の振り返りとワーク形式のディスカッション・意見交換をオンライン上で行う(コミュニケーションの場を取り入れる)
- 学習したことをもとに、現場で改善の課題を設定し実践でトライする(実践でトライする場を設定する)
- 講師から結果に対するフィードバックを受け、ブラッシュアップする(実践に対するフィードバックを行う)
- 改善の実践結果をオンライン上で発表し合う(アウトプットを披露する場を設定する)
オンラインセミナーやeラーニングのみを活用した学習だけでは実践力の習得が不足することが否めませんが、②~⑤を組み合わせて行うことにより、現場で実践に使える有効性の高い教育が可能となります。
ポイントとなる視点を確認していきましょう。
知識学習は可能な限り個人で進める
資料を説明するだけであったり、何かを読んだり聞いたりするだけで得られる情報に関しては、自分で時間をつくり個人で完結させることがポイントです。現代ではeラーニングによる動画学習も普及していますので、そのようなWEBツールを活用することで、「効率的」に行うことが求められます。
また、集合研修で多くの人の時間を合わせる、集合研修に出られなかった人を後からもう1度説明するといったことは、教育担当者の工数からも現実的ではなくなっています。時間制約の中で柔軟に学習が進められる方法が求められている傾向が強くなっているのです。
もちろん、感染症対策の観点からも、なるべく個人で出来ることは個人で完結できている状態が望ましいことは言うまでもありません。
知識学習は、その後の実践学習を見据えたものとする
知識学習をするだけでは終わらない研修の流れを初めからつくっておくことも欠かせません。
学習した後に、その知識を使って「自分で何かを行わなければいけない状況」があるかないかで、学習意欲・真剣度は大きく変化します。ワークショップや意見交換の場を設定するなどの研修の流れをつくっておきましょう。
極端に言うと、ちゃんと学習を行っていなければ恥をかいてしまうような状況をあえてつくることも時には必要です。人間は「他者から見られている」ことで、結果を出そうと頑張る生き物でもあります。環境次第で行動も変わることを踏まえた研修設計が大切です。
実践学習フェーズでは、小まめにフォローをする
「学習すること」、「理解すること」、「自分で実践すること」、これらの間には大きなGAPがあります。
・学習は完了しているけど理解出来ていない
・理解は出来ているけど実践が出来ない
といったことは多々あるものです。
特に実践フェーズにおいては、出来る人と出来ない人の差が生じやすいのが実情です。そこで、講師や教育担当者は、可能な限り小まめに、なお且つ問題解決の8ステップなどの体系立てられた枠組みを使いサポートを行っていくことが求められます。
このサポートは、必ずしも対面ではなくても実施が出来るはずです(もちろん現場で現物・現実を見ながらサポート出来ることにこしたことはありませんが、現場に行けないからと言って何もしないのは以ての外です)。
参考:問題解決の8ステップ
Step1:取り組む問題の明確化
Step2:問題の層別と問題点の特定
Step3:目標値、達成時期の明確化
Step4:真因の特定(なぜなぜ分析)
Step5:対策案検討とスケジュール策定
Step6:対策の実行
Step7:効果の確認と評価
Step8:標準化と横展開
実践トライ結果は受講者同士で共有する
実践でトライをした結果は、職場の人あるいは他の受講者へ披露する場を設定しましょう。自分のアウトプットを他者に見られる場をつくることは、取り組みの本気度に直結します。初めから発表をすることを前提に学習を行い、実践の際に適切なフォローを受け、たとえ小さい効果だとしても自分で結果を出してみる。
このプロセスを踏むことにより、きっと発表を行う段階では、改善の質は1歩上がっているはずです。
おわりに
新型コロナウイルスの流行は、いつかは必ず落ち着く時期がきます。
しかし、だからと言って今後また集合教育を中心とした研修に戻る可能性は非常に低いというのが大方の予想です。
つまり、「同じ内容を一度に全員に」というやり方は過去のものと認識しなければいけません。そして、「研修は対面で行わなければ効果が最大化されない」という考え方からの脱却も必要なタイミングなのかもしれません。
「コロナ禍でも教育を疎かにしたくない」
「むしろ過去よりも更に実のある教育を行いたい」
”オンライン”という手段を有効に活用し、効率よく且つ効果を最大にする研修設計。
積極的に検討を始めた会社と従来のやり方にこだわる会社とでは、数年後にきっと大きな差が付いているはずです。
オンラインによる実践研修をご検討の際には我々にご相談ください!
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