カイゼンベース / KAIZEN BASE

「誰も見ていない時でも」安全第一で動ける人を増やす【京セラ株式会社 滋賀東近江工場様】

京セラ株式会社 滋賀東近江工場には、安全を『座学』ではなく『体感』で学べる教育プログラム「安全体感道場」があります。カイゼンベースでは「安全体感道場」における様々なテーマの動画教育コンテンツを「オーダーメイド動画制作」にて支援させていただいています。

学びを深める安全体感道場と、集合研修の限界を超える動画教育

インタビュー全体像
安全防災課の皆さま(左から増子様、下野様、松葉様、薫森様、福山様)インタビュアー:カイゼンベース立岡
今回は、安全体感道場を実際に見学・体験させていただき、推進を担当する安全防災課の皆さまにお話を伺いました。

お話の中で浮かび上がってきたキーワードは『安全文化の醸成』です。——誰も見ていない時でも、安全第一で行動できる人を増やす。そのために現場を重視し、体験と動画の両輪で教育を回し続けている——皆さまの強い想いが見えてきました。

Q:滋賀東近江工場はどんな役割を持つ拠点ですか?

増子様:京セラ株式会社は創業者・稲盛和夫が掲げた経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」を根幹として活動しています。
全体としては売上が約2兆円、グループ会社289社、従業員数は約7万7千名という規模です。生産拠点は北海道から鹿児島まで全国にあり、滋賀東近江工場はここ滋賀県にあります。滋賀東近江工場は従来2つの工場でしたが、一昨年に統合し、現在は「第1ブロック(旧八日市工場)」と「第2ブロック(旧蒲生工場)」という体制で運営しています。

インタビュー冒頭
増子様
もともと第2ブロック(旧蒲生工場)は1963年に京セラ最初の工場としてスタートした拠点で、いわば“マザープラント”的な位置づけです。
第1ブロック(旧八日市工場)は1980年にできて、すでに約45年が経っています。従業員は第1ブロックが約2200名、第2ブロックが約1250名で、工場全体として約3400〜3500名規模です。第1ブロックでは、セラミック製品各種、水晶関連部品などの電子部品、切削工具といった機械工具、プリンター関連、太陽光発電・太陽電池システム周辺機器、メタライズ製品などを生産しています。第2ブロックは、これらに加えて医療用製品等も生産しています。

Q:安全防災課の皆さまのお仕事を、あらためて教えてください。

増子様:大きくは「労働災害の防止」「従業員の健康管理」「火災防止(消防防災)」の3つです。工場全体の管理を担っています。体制としては、責任者が私(増子)で、副責任者が下野。安全係の責任者が松葉で、メンバーに薫森、福山がいます。

下野様:安全防災課の中には安全係、衛生係、消防防災係があって、今回の取り組みは安全係が担当しました。

増子様、下野様

Q:安全体感道場ではどのような教育を行っていますか?

作図
増子様:「挟まれ」や「感電」など、工場内で頻度が高く、起きた場合に大きな災害につながるリスクをいくつかのテーマに分けて選定し、動画教育と体感教育を行っています。

動画教育では、リスクの仕組みや大きさ、予防法や対応法などの基本知識を事前に学びます。
体感教育では、リスクを小さな規模で再現できる設備を用意し、実際に触れて感じてもらいながら学ぶことが可能です。

今回カイゼンベースさんに支援していただいたのは、基本知識を学ぶ動画教育です。ちなみに動画教育を導入する前は、貼り紙や講師による都度説明で基本知識を学ばせていました。

しかしそれでは伝わりにくかったり、講師によってばらつきがあったりしたため、今回オーダーメイド動画を採用しました。その結果、伝えるべきところが漏れなく教育できるようになりました。

動画放映

Q:安全体感道場で教育を受けるのはどのような方々ですか?

体感ブース➀
増子様:まずは新入社員です。新卒の方や他の工場から転勤で来られた方、職場異動した方に優先的に受講していただいています。

その後は入社5年目の方は全員に受講いただくなど、徐々に広げていっています。今後は全社に浸透させていく方針です。

Q:カイゼンベースを制作パートナーとして選んだ理由は何ですか?

薫森様:決め手は「分かりやすいアニメーション動画」です。あとは「オリジナルで動画を作ってくださる」点も、他では見つけられなかったです。

今期の取り組みとして、従業員の心に残る・安全意識が高まるような動画をどういう風に作っていくかと考えたときに、インターネット検索で見つけたカイゼンベースさんの動画がすごく分かりやすく、声をかけさせていただいたのがきっかけです。

薫森様

Q:受講後の反応はどうでしたか?

アニメーション
薫森様:アンケートを集計していますが、「分かりやすい」という意見や、「これどうやって作っているの?」という声もありました。

アニメーションで労災について学べるため理解しやすかった、という意見も多くいただいています。安全意識向上につながったと感じています。

増子様:安全体感道場全体としては、最初は事務局側から発信をして実施していましたが、次第に事業部(現場)側から「自分のところでやりたい」、「もっと受けさせたい」と、自律的に声が上がってきたことが一番大きな変化だと思います。

労働災害が多くて困っている職場は特に、「自分たちの職場でも教える人を育てて回数を増やす」形で展開されてきました。やらされているのではなく、自らやっていこうという雰囲気になった。そこは効果があると受け止めてもらえたからではないかと感じています。

インタビュー中間

Q:運営上で注意していることはありますか?

松葉様
松葉様:やはりまずは受け身でなく、自分事として体感してもらうことが重要だと思っています。

そのほかにも、安全という最も基本で大切な教育に「真剣」に取り組んでいただくためにも、過去の災害事例をまず説明してから、「今回を踏まえて、皆さんはこれからの作業を安全に行うためにどうしますか」という前振りを加えるなどの工夫を行っています。

Q:安全体感道場以外に、安全教育の取り組みはありますか?

増子様:安全体感道場とは別に、毎月いろいろなテーマで各自への動画教育を行っています。

滋賀東近江工場には交代勤務(14時頃から)、夜勤(22時頃から)など、いろいろな勤務形態の方がいます。安全体感道場のような集合研修の形式だけでは限界があるため、パソコン一台あれば同じ内容を、それぞれが同じレベルで考えられる個別教育にも取り組んでいます。今回カイゼンベースさんで作っていただいたオーダーメイド動画は安全体感道場と両面で、この各自への動画教育という仕組みの中でも使わせてもらっています。

教育設計

Q:実際に制作進行をしてみて、感想をいただけますか?

薫森様➁
薫森様:当方では動画をあまり作ったことがないので、リードをしてもらって助かりました。

自社工場の状況に沿ってオーダーメイドで動画を作れることから、現場写真を入れる提案などもいただけて、従業員が「ここ見たことある」と思える動画になったのが良かったです。「こういうのを入れたらどうか?」という具体的な提案もいただけて、より良い動画に仕上がったと思います。

Q:皆さんが目指している「安全」について教えてください。

増子様:最終的に目指すべきは「安全文化の醸成」だと思っています。

分かりやすく言うと、「誰も見ていない時に」安全をきちんと考えて行動できるか、ということです。誰かが見ていない時でも安全第一で行動できる人が増えれば、危険な行動をする人がいた時に「それ危ないよ」と注意できます。そういう人をいかに増やすかが目指すところです。そのためには教育が必要で、繰り返し教育していくしかないと感じています。

増子様、下野様➂
下野様:自然と危険を察知して安全な行動が取れるようになってほしいです。「横着しようと思ったらできるけど、危ないからやめとこう」と思ってくれたら、それだけで事故を防げることもあると思います。

動画は意識が残りやすく、繰り返すことで自然と身についていくと思っています。

Q:安全文化を根付かせるために、その他の取り組みはありますか?

増子様:今力を入れているのは安全巡視です。去年ぐらいから特に力を入れて、相当な頻度で現場を巡視しています。工場長も月に5〜6回、毎回2時間くらい現場を回り、3ヶ月程度で一巡しています。

巡視の際も「指示の出しっぱなし」にならないよう、指摘だけでなく対話型にして、過去の指摘が理解されて直っているかなど維持管理も含めて見ています。また各管理職にも巡視をお願いするなど、現場での継続が重要だと考えています。

安全体感道場

Q:最後に今後の展望を教えてください。

ありがとうございました。
増子様:取り組みを「地に足をつけて現場に落とし込む」ことが大事だと思っています。
動画教育も良い取り組みですが、同じことをずっと繰り返すといずれマンネリ化します。その時に「次の手」を打ちながら、現場の状況を確認して、繰り返し展開していければと思います。時代のニーズに合った取り組みは必要だと感じています。

インタビュアー(立岡):今日は本当にありがとうございました!

安全体感道場の体験レポ

取材当日は、実際にいくつかのテーマの体感教育を体験させていただきました。ここからは各テーマの概要や狙い、体験した感想などを紹介します。

エアプレス(挟まれ)体感

エアプレスの残圧による挟まれ体感ができる設備です。エアー駆動の設備は、非常停止や電源OFFを行なったとしても、残圧によって動く危険があります。プレス機に引っ掛かった異物を取り除く際に、単に機械を停止するだけでは不十分で、「残圧を開放する」、「圧力ゲージの値ゼロを確認する」という決められた手順を必ず守らなければ、大きな事故につながるリスクがあります。

エアプレス
矢印
インタビュアーの体験メモ:画面奥のプレス機とアルミ缶の間に異物が挟まっています。左手前の赤いボタンで機械を非常停止しただけでは、異物を取り除いた際に残圧によってプレス機が作動し、アルミ缶がものすごく大きな音を立てて潰されます。「これから起きうること」が具体的に想像でき、ハラハラさせられた点が印象的です。
どのように手順を守るべきかがシールによって明示されているため、単に怖いという感想だけでなく「作業前に何を確認すべきか」、「手順をどう守るか」といった行動の話に自然とつながる設計だと感じました。

松葉様:エアプレスの挟まれは、エアーの残圧が原因で起きた事故を受けて出来上がっています。大きな事故になり得るので、再発しないように、装置は小さくても「残圧がこれだけ怖い」と知ってもらう狙いがあります。

福山様:新入社員として研修に参加し、実際に体感しました。大きな音がするとか、缶が潰れるとか、「これを人に置き換えたら怖いな」とすごく印象に残っています。

松葉様、福山様

感電体感

感電
実際に手で電気を感じることができる設備です。相当の痛みを感じる「5.0mA」までの交流電流を体感することができます。

電流の強さや時間、水分などの条件を調整することができ、安全かつ個人差なく感電の危険を体感することができます。

インタビュアーの体験メモ:左側の機械で電圧の強さと時間を設定し、右側の決められた場所に手を置いてボタンを押すことで感電を体感できます。

電圧の強さは5段階で、1段目は気付くかどうか程度でしたが、2段目は「痛っ」という声と共に手を引いてしまいました。体験後は、設備や部材を扱う際に“当たり前に確認する”意識が強まります。ちなみに、3段目まで進む方は滅多にいないそうです。

感電体験
薫森様3
薫森様: 感電は、なかなか自分で体感する機会がない中で、「小さいものでも触れたら危ない」と分かる貴重な機会になると思います。

薬品の怖さ体感

単純な仕掛けですが、水が入っている容器に水を入れたり、製品を落とした時に、水がどのように跳ねて、衣服や皮膚に付着するのかを体感できます。工場では体や目に触れると危険な薬品を扱うこともあります。うっかり触ってしまったり、こぼれてかかってしまったりする以外にも、不意の水跳ねなどによるリスクも小さくありません。水跳ねが起きる状況や仕組みを理解することで安全意識を高めます。

水撥ね
下野様➂
下野様:水槽に入れた水が跳ねる仕組みを見せて、「水が薬液だったらどうなるか」をリアルに想像してもらう狙いがあります。水がどれだけ跳ねるかを自分の目で見てもらうことで、何もつけていなければ皮膚に当たるかもしれない、という感覚を持ってもらいやすいです。

作業中にポケットから何かを落として跳ねてしまうことにも注意しよう、と状況説明を加えることで、具体的な行動にもつながりやすいと感じています。

溶剤爆発体感

工場ではガソリンやエタノールのように、すぐに蒸発して「可燃性ガス」として空気中に広がる液体(溶剤)を扱う場面があります。「可燃性ガス」は、静電気などからも引火し爆発を起こすため、大きな事故につながる可能性があります。

この設備では、わずかな溶剤から可燃性ガスを発生させ静電気で着火することで、小規模の爆発を体感することができます。

爆発
シリンジ
インタビュアーの体験メモ:指導員の方がシリンジでごくわずかな溶剤を抽出し、左側のケース内に可燃性ガスを発生させます。その後、真ん中の静電気発生装置を使って着火します。

引火した瞬間に「ぼんっ!」とかなり大きな音が響き、思わず声が出ました。「この何倍もの規模で事故が発生したら…」と恐ろしくなりました。

編集後記

動画で「学びの質を揃え」、体験で「自分事化し」、巡視と対話で「文化として根付かせる」。京セラ株式会社 滋賀東近江工場の安全教育は、単発の施策ではなく、繰り返し回る仕組みとして設計されていました。
「誰も見ていない時でも」安全第一で動ける人を増やす——その考え方が、体感教育のテーマ一つひとつと、動画教育の運用の中に通っているのが印象的でした。

この度はインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。

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